恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「あと……左のこめかみにある小さいホクロがチャームポイントだ」
「勝手に! 人のチャームポイントって……」
ーーー恥ずかしい。課長ってば、私のこめかみにホクロがあるのを知っていたなんて。しかも、それを勝手にチャームポイントだと言うんだから……
かなり、照れくさい。
恥ずかしい。
少し褒められたような気がして、課長がいい人に見えた。
「他にチャームポイントが見当たらないからな」
ガクッ!
他にない? チャームポイントが!
はああ……疲れがどっと出た。残業なんて誰がやるか!
「課長、用があるので残業出来ません」
「何? ここまで呼び出しておいて、それは無理だ。皆帰ってしまっただろ」
ーーー知らないよ。そんなの。
「全く、手がかかり過ぎだろ。お前は」
課長が私の手首を掴んだ。
「課長、離してくださいよ。残業しませんから!」
「時は金なりだ。知らないのか? 時間は大切にしろ。残業したら、夜飯を奢ってやる」
「奢りですか?」
「マンションのローンで大変だろ? 少しでも貯金して繰り上げ返済しろよ」
ーーー繰り上げ返済。確かに。残業代も入り、ご飯代もかからないなら……それはありがたい話だ。
「やります。残業」
完璧にのせられた私は、残業をすることを決めていた。