恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「課長、これで終了です。お疲れ様でした」
ファイルをデスクに置くと、パソコンに視線を向けたまま課長が言う。
「お疲れ様。悪かったな」
「いいえ……」
「……? なんだ? 山田」
動かない私を見上げる課長。
「お忘れですか? 課長。晩ご飯の件ですよ」
「あ〜、忘れてた。ちょっと待て……」
課長は、パソコンの電源を落とした。立ち上がり、当たり前のように私の腰に手を回した。
「え? 何、これ?」
驚いて課長を見ると、課長は更に私を引き寄せた。
「課長!」
「なんだ」
「また誤解されるようなことをしないで下さい!」
「どうせ、誤解されてる」
「課長!」
「なんだ? 山田」
「やめてくださいよ! 腰がムズムズします」
課長の手に指をかけると、課長の手がやっと離れた。
安心しかけた時に、課長の手が私の手を握ってきた。しかも耳元で
「ムズムズするって……感じやすいのか? 山田は」と聞いてきた。
「か、課長! 言っていい事じゃないですよ! そういう発言は!」
「そうか? 敏感なのは、いい事だ。てっきり、お前は鈍感なタイプかと思ってきた。なんだ、早く言え」
「敏感だとか課長に関係ないじゃないですか。なんで腰に手なんか? しかも手も繋がなくってもいいでしょ〜」
繋がれた手を見た。