恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「さっきから、何故一言も話さない?」
「はっ! そうですか? 無意識でした」
ーーー本当に無意識だった。
エレベーターから降りて、ケッタイな生き物である課長の背中を見ながら歩き続けていた。
「まあ、お前と無駄なおしゃべりをする気もない。入るぞ」
ーーー入るぞって! うそ〜ん。
目の前にあるのは、○○うどん。全国にチェーン展開するうどん屋だ。
「うどんですか」
「うどん嫌いなのか」
「いや、好きですよ。でも、課長が奢るっていうから期待して……」
店に入り、慣れた感じでプラスチック製のお盆を手にする課長。
「かき揚げを食べてもいいぞ。とり天もちくわ天も食べろ」
ずらっと並ぶ天ぷら。
「いやー、そんなに食べないですけどね」言いながら、天ぷらを選ぶ。
ーーーせめてエビ天にしとこう。
釜揚げうどんに、エビ天。
思わず、ため息をついた。
「こんな時間に、ガッツリ食うと思ってんのか?さらっと食え。うどんで充分だ」
「そういう問題ですかね? 私は奢りを期待して残業したのに」
会計をする課長を置いて、私はさっさとテーブルについた。