恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「ネギくさいぞ。だから、言っただろ? ネギは、あんまり食うなって」
「近寄らなければいいんですよ。課長が!」
「そうだな。だけど、お前と俺は噂仲間だし……皆の期待には、ある程度応えないとな」
課長を見ると、少しだけ瞳の色が違うように感じた。
「はあ? 何言ってんですか?」
課長の言いたいことがさっぱりわからない。
「山田、火の無いところに〜?」
課長が私に続く言葉を求めていた。
「……煙は立たない」
「だろ。俺は皆の期待に応えたい。山田、力を貸せ」
「え? なんの力?」
課長の顔が近づき、長い睫毛が私の頬に触れた。それと同時に唇にキスされていた。
固まりながら見開いた私の視界に入って来たのは、カウンターの隅に座るマスターが口髭をペロリと外しているところだった。
ーーー信じられない……。マスターのヒゲは、取り外し可能なんだ? 嘘ものだったってことだ。
嘘みたいなことが、もう一つ起こっていた。キスだ。
ーーー課長とキス? なんでよ!