恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「昨日、夜よく眠れませんでしたよ。課長のせいで」
「ん? なんだ、俺のことを変に妄想して眠れないのは俺のせいじゃないだろ? お前の勝手だろ」
「いや、違いますよ。誰が妄想するんですか! いやらしい」
「いやらしい妄想? 誰もいやらしい妄想とは言ってないぞ。……お前のいやらしい妄想に勝手に俺を出演させるなよ」
「だから! してませんって! 最後まで話を聞いてもらえます? 」
電車のドアが閉まり、走り出した途端にガタンッと車体が揺れた。
よろめいた私を課長が抱きとめてくれる。
「はあ、すみません。課長。すごい揺れでしたね」
「そうか? それほどでもないぞ。……わかった、お前、自分の妄想を現実にしようとしてるだろ? 無理に俺に抱きついたりして」
急いで課長から離れ、ついでに手も引き離した。
「課長!無理に抱きついたりしてません。もう、話もいいです……」
「そうグレるな。冗談だ」
私の頭をポンと叩いて、課長は私の腰に手をまわした。
「もっと俺のそばにいろ。揺れてもびくともしないくらいに引っ付いとけ」
そう言って私は腰を引き寄せられた。
ーーー! 近い! こんなにぴったりくっついたら……
すぐ近くに課長のスカした横顔があった。仰け反った状態の私が普通に立ったら、きっと課長の頬に私の額がくっついてしまいそうだ。
ーーーでも、仰け反った状態は割と疲れる!
課長から離れようとするには、なかなか力がいる。
「震えるほど力入れてないで、俺に体を預けろ。支えてやる」
それが当たり前みたいに言ってのける課長。