恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
エレベーターのドアが閉まり、課長が私を抱きしめていた。
「もう少し……お前に触れていたい…だめか?」
抱きしめながら、課長が囁く。
ーーーこれは、戦略……だ。きっと、遊び人な課長が、女とも思えない私を惚れさせると豪語したから。惚れさせる手口なんだ。
そうは思ってもドキドキしていた。
ーーーおかしいな課長なんか嫌いなはず。
「ダメです」
「ダメ? そう言っても本当は?」
「は? だから本心です。……あの、階段で帰りますから」
課長が抱きしめる手を緩める。
「なら……」
顔を傾け、当たり前みたいに近づき隙のある私の唇にキスしてきた。
「! …ん……」
「おやすみ。また明日な」
屈託のない笑顔を見せる課長。
「課長! キスとか!やめてもらえます? 」
「し〜、近所迷惑だ。大きな声出すな。お前の城なんだろ? 近所ともうまくやりたいよな?」
ーーー確かに近所付き合いは大事だ。
黙り込む私に背を向ける課長。
ーーーいいようにあしらわれている感がビシビシする。こんなのどう考えても理不尽だ。何か言い返したい。
そうだ!
「課長、言い忘れてましたけどね、夜中に犬を走らせたり、吠えさせない方がいいですよ、近所迷惑ですから」
課長が私を振り返る。
ーーーやった! 形勢逆転だ。迷惑な行動してんのは、課長でしょうよ!
私は、仁王立ちに腕組みして課長を見た。