きみと世界が終わるまで


そっと息を吐くと、その息は生ぬるい潮風にあっという間に流された。


「……ねぇ」

「うわ」

「ちょっと優太、そんなにびっくりしなくてもいいじゃない?」

「だ、だってさ」

「なあーに。言うことあるならはっきり言いなよ。優太ってば」


このまま目を閉じていればきっと僕は正気に戻れる、ゆりあの姿なんて幻となって消えてしまう。


そう思っていたのに、なんだ、この状況は。


僕の腰にきつくきつく巻きつくのは、誰かの腕。


誰の腕かなんてそんなのとっくに分かっているはずなのに僕はそれを認めたくなかった。


認めてしまえば、きっと僕は大量の涙を流してしまうだろうから。


……だけど、きみの腕の心地よさも柔らかさも、背中にコツンとあたる頭の位置も、なにもかもがきみそのままで。


唇を尖らせているんだろうなと、表情まで予測できる。


現実的にはありえないというこんな状況の中なのに、そこに、今ここにゆりあがいることを認めざるおえない。


「ゆりあ……」


僕は海水につかったままでゆりあの腕をほどき、ゆりあに向き直るとずっと抱きしめたかったきみの体を力一杯抱きしめた。


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