きみと世界が終わるまで


そんな僕を見かねてか、ゆりあは僕が分かるように何度も自分がこの世界にきたわけを教えてくれた。


それは、つい昨日起こったことらしい。


ゆりあは死んだあと、真っ白な世界を宛てもなくさ迷っていた。


ずっとずっと、真っ白な世界の中を歩き続けて、そしてようやく白だけの世界に光が見えてきたと思えば、そこには小さな人間がいたそうだ。


そこでゆりあは、その人間に言われた。


《あなたにとても会いたがっている人が、前の世界にいます。毎日泣いているみたいです。どうしますか?会いにいきますか?》


──ゆりあは、僕をそっと見上げた。


「すぐに、優太のことだって分かった。だって優太は、私がいないとだめだから」

「……そ、そんな言い方は」

「でもそうでしょ?優太は私のことが好きだもん」


僕はゆりあからそんな風に思われていたのかと少し恥ずかしくなったけれど、でもそれは事実だからなにも言わずにその言葉を受け止める。


それより、さらっと僕がゆりあのこと大好きだなんて、そんなこと言うなよ。


本当、恥ずかしい。


「私はすぐに会いに行くって返事をしたの。そうしたらね、その人間が続けて言った。《一日、たった24時間しか大切な人といられませんが、それでもいいですか?》って」

「……それでも、僕のところへきてくれたの?」


僕の問いに、きみは口を結んでそっと目を伏せた。


「優太が私に会いたがってるのに、会いに行かないわけないでしょ?」


きみのさらさらな黒髪が、潮風に吹かれてきれいになびく。


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