浮気男に逆襲を!
「その子にイイ人がいるってメールしてあげたいけど……走りすぎて指動かないかも」
ちらっと試すように流し目してみる。
爛兄は色黒の頬をほんのり赤らめ、緩んだ顔を隠すように握り拳を口元に当てた。
「……今日はもう戻ってよし」
よっしゃ! ブラフ作戦成功♪
こんなことなら、散々走らされる前にやっとけばよかったな。
まぁそんなのは後の祭りってもんだけど。
「ありがと! 爛兄は帰らないの?」
ちなみにここは近所の廃校のグラウンド。
あたしたちが立っているのは、400メートルトラックのスタート地点だ。
「俺は走り込みをしてから帰る」
「……そ、っか」
あぶなー。今ちょっと声震えちゃった。
なるべく平静を装わねば。
間違っても、わっほぃ無駄な努力ぅとか思っちゃダメだ。
「そんじゃお先に。頑張って~」
吹き出しそうになるのを必死にこらえ、そそくさと背を向けて歩き出す。
兄者、ごめんよ。
この妹は、愛に飢えた日々が本当に終わることを祈っております。