浮気男に逆襲を!


「何? 塚原くん」



あえて名字で呼ぶ。


理由は、もうあたしたちが何の関係もないってことを知らしめるため。


残念ながら、新カノさんの睨みにひるんだとかそういう乙女な反応ではありません。


んで、隣で勝ち誇った笑みを浮かべる欲情少年は一旦スルーし、これでもかってくらい冷めた目で伸平を見据えた。


だけど、呼びかけた当の本人は無言のままで、ただ気まずい沈黙が流れるのみ。


だからあたしは何も言わずに視線を外し、そっと先輩と手を重ねた。



「帰ろ、アッくん先輩」


「……いいのか?」


「うん。特に話もなさそうだし」



ニコッと笑って、ドアを開ける。


閉める時に振り返ると……どこか寂しそうな顔をした伸平と目が合った。


何であんたがそんな顔すんの?


あたしのことなんかウンザリだって言ってたくせに。


まさか、本当に嫉妬してる? 


だとしたら……


もう少しで、あたしの復讐は終わりを迎えることになる。


そうなったら、あたしは……復讐のために始めた先輩との関係を、断ち切るべきだろうか?


< 129 / 265 >

この作品をシェア

pagetop