浮気男に逆襲を!
信じらんないって顔で固まるあたしを見下ろす、伸平のダークな笑み。
その瞬間、あたしの中で何かがキレた。
「……せ」
「あ?」
「離せって言ってんだよ」
我ながらドスのきいた声で威嚇する。
それが意外だったのか、ほんの少し腕の力が緩む。
その隙をついて、伸平の顎に思いっきり頭突きを叩き込んだ。
「ぐぁっ!」
声にならない声で叫ぶ。
あたしはその大きな体を突き飛ばし、すっくと立ち上がった。
「今日のこと……絶対許さないから」
怒りのままに吐き捨て、床に横たわっていた鞄を手に外へ出る。
猛ダッシュで階段をかけ下りる最中(さなか)、苛立ちのあまり歯ぎしりしてしまう。
腹が立ってしょうがない。
まさかあんなことされるとは想像もしてなかった。
許す気なんてさらさらなかったけど、これじゃ穏便に終わらせようっていう気持ちすら削(そ)がれるわ。
マジムカつく…。許せない。
爪がくい込むくらい、ぐっと拳を握った。