浮気男に逆襲を!
そうしてたどり着いた玄関で靴を履き替え、門の方へ向かう。
ワックスで整えられた綺麗な茶髪が目に入り、じわりと涙腺が緩んだ。
「おー、りん! 遅かったな…って、うわっ! ?」
「先輩~…」
アッくん先輩の胸にもたれるようにして、ブレザーをみるみるうちに濡らしていく。
こんなに泣いたのは産声をあげた時以来じゃないかってくらいの大泣きぶり。
「お、おい……大丈夫か?」
心配そうな声で聞いてくる。
あたしはその体勢のまま、コクリと頷いた。
えぇもちろん大丈夫ですよ。
だってあたしは、腐っても中沢凛花ですから。
万が一にも、『ふぇ~ん怖かったよぉ~』なーんて可愛らしい涙は流さないのだ。
「……ぃ」
「え?」
「悔しい」
「…は?」
「マジ悔しい! 腹立つ! 一生の汚点!」
せきを切ったように叫び出すあたし。
先輩はポカーンと固まってる。
まぁ事情知らないもんね。さもありなんってやつだよ。
だがしかし! アッくん先輩よ!
あんなヤツに唇を許してしまったこの悔しさがわかりますか! ?
あーもう、マジ不覚。不覚すぎて泣けるわ。
ってか、既に泣いてましたね。
いやはや、お後がよろしいようで。