浮気男に逆襲を!
先制はストレート ─side 伸平─
俺が初めて中沢の存在を知ったのは、2年に上がってすぐのこと。
「ふぁ……ねみー」
当たり前のようにサボった始業式の翌朝、盛大に欠伸をかまして教室に入り──
黒板横に掲示されていた座席表を一瞥し、窓側一番後ろの定番席に腰を下ろす。
既にその隣には人がいたので、俺は興味本位で声をかけてみた。
「おい、お前」
「ん?」
パッと読みかけの本から顔を上げ、キョトンと目を丸くしてこっちを見る。
長い黒髪をストレートに下ろした、化粧っ気のねぇ冴えない女。
"地味子" って程ではないが、こんなおとなしそうなヤツが隣じゃ面白くも何ともねぇな。
火を見るより明らかにテンション急降下した俺に、女が不思議そうに口を開いた。
「今、あたしに何か言わなかった?」
コテンと首を傾げる。
どうやら無意識らしいその仕草に、不覚にもドキッときちまった。