浮気男に逆襲を!
初対面を果たした後数日経っても、さほど俺達の関係は変わらなかった。
隣の席とはいえお互い話しかけることはなく、中沢のマイペースさも相変わらず。
ヤンキーだのボスだのと毎日のように噂されている、ある種の有名人の俺の横で、休み時間の度に机に突っ伏して寝入る余裕っぷりなんかは逆に笑える。
なんつーか……見てて飽きない。
"いつも通り" の日々に退屈していた俺にとって、コイツはその辺のヤツらとはひと味もふた味も違う変わったオモチャみてぇな存在で。
ついつい目で追ってしまうし、クラスメートとの会話に聞き耳をたてては、その天然全開の返しに吹き出してしまう。
その気持ちが何なのかなんて、当時の俺は全く気が付いてなかった。
だがある時、俺のイタズラ心に火がついた。
アイツの飄々とした態度を、崩してみたいと思うようになったんだ。
そして同時に、アイツの中の "女の顔" を引き出してみたいという感情が現れ始めた。
何だそりゃと一笑に附されそうだが、面白好きの俺にとって、これはちょっとした楽しみで。
人一倍からかいがいのありそうな相手を前に、俺は正直浮かれていた。
せいぜい楽しませてくれよ? 中沢凛花。
俺はニッと笑って、隣で熟睡してる彼女を見つめた。