浮気男に逆襲を!
このままじゃ俺の計画が水の泡だ。
柄にもなく焦った俺は、真剣な顔はそのままに重々しく口を開いた。
「中沢は俺のこと知らないかもしんねぇけど、俺は去年からずっとお前が好きだった」
こんなのはもちろん口からでまかせ。
だが、すぐにそれがミスだと悟る。
そういや俺、こないだ "お前なんか知らねぇ" 宣言しちまったんだよな。
これじゃとりつく島もねぇだろ。
……と、思ったんだが。
「そ…それホント…?」
意外にも、中沢は嬉しそうに目を見開いて俺を見てきた。
これ……今の作り話信じてるっぽいな。
やべ。こいつマジでウケる。
「ホントだって。冗談でこんなこと言うわけねーだろ?」
フッと努めて爽やかに笑ってみせると、彼女はあのピュアさたっぷりの笑顔を浮かべ、コクンと大きく頷いた。
そして、微かに唇が動く。
「……ありがと」
人を疑うことを知らない澄んだ瞳にたじろぎながら、俺は平静を装って微笑んだ。
「ああ。どーいたしまして」
──こうして、俺達の付き合いが始まった。