浮気男に逆襲を!
"友達" どころか "クラスメート" としての顔すらまともに見ていなかった俺は、アイツが "恋人" としてどんな反応を見せてくれるか内心期待していた。
冴えない身なりや飾り気のない喋り方を変えてみたり、積極的に俺と親しくなろうと努力する姿なんかを想像しては、ワクワクしてついにやけてしまう。
それが惚れてる証だなんて露知らず、人間観察的な気分でノリノリだった俺。
今にして思えば、どんだけ鈍感なんだよとツッコミを入れてやりてぇところだ。
だがまぁ、これまで本気になった女なんてただの1人もいなかったから、無理もねぇけどな。
「あっ、そーだ。塚原くん」
あの茶番告白劇の後、教室に戻る途中で、中沢が急に俺の顔を覗き込んできた。
そこそこ身長差があるからドアップにはならないまでも、目の前わずか十数センチの距離に現れた原石フェイスに面食らう。
「な、何だよ」
ついどもってしまったが、そんなん全く気にしてませんよ的なイイ感じの大ざっぱ加減で彼女は続けた。
「ふと思ったんだけどさ。あたし、塚原くんのこと何て呼べばいい?」
「……は?」
何かと思えばそんなことか。
微妙に拍子抜けしつつも、俺はあることを閃いてニヤリと笑った。
せっかくだし、呼び捨てさせてみっか。
明らかに男に免疫がなさそうなこの女が、一体どんなリアクションすんのか楽しみだ。