浮気男に逆襲を!
──…ところが。
それから幾度となく色々な手段をもって仕掛けてみたものの、その度返ってくるのはザ・中沢的リアクション。
もはや面白いか面白くないかの領域を逸脱し、呆れしかおぼえねぇ今日この頃だ。
俺にとって風変わりなオモチャに過ぎなかった、一介の女に振り回される日々。
さすがにそろそろ飽きてきた。というか、疲れてきたと言った方が正確だな。
んで、そんなある日。
「ねぇ伸平。最近カノジョとどうなの?」
中学時代からの知り合いである嶺岸(ミネギシ)結衣が、周囲からもあまり恋人っぽく見られてない俺たちの関係に探りを入れてきた。
"別に何もない" と気だるげに答えてやると、嬉しそうに笑いながら上目遣いで俺を見つめ、
「じゃあ、私と付き合わない?」
予想外の台詞が飛び出して、俺は狐につままれたような顔で固まった。
付き合うって、俺とコイツが?
いやいや、そりゃねぇだろ。第一俺には中沢が……
そこまで考えて、俺の頭上で豆電球がピカリと光った。
そうか。このテがあったか。
クックックと黒い笑みが漏れる。
うまくいけば、アイツがヤキモチ焼く姿を拝むことが出来るかもしれない。
その一心で、俺はあっさり彼女からの告白を受け入れた。
これが最低な選択だなんて、この時は1ミリも思わなかったし、中沢に対しても結衣に対しても全く罪悪感なんて抱いてなかった。
後になって散々後悔するってのに、呑気なもんだよな。