浮気男に逆襲を!
「いや、は? じゃなくて。あたしの彼氏だよねって聞いてんだけど?」
ダークな笑みを貼りつけて、ドスのきいた声で威嚇してくる。
これまで見たことのない異様な雰囲気に、顔がひきつるのがわかった。
「何いきなり変なこと言ってんだよ。そんなん当たり前だろ?」
動揺しつつ、何とか平気なフリをする。
「当たり前、かぁ。じゃあ何で浮気したの?」
ため息混じりに発せられた言葉に、目を見開く。
まさか、バレてる…?
自分でも不思議な程に焦りをおぼえた。
「し、してねーよ。浮気なんか」
その独特なムードに呑まれてしまい、バレてもいいと思っていたはずの浮気を隠蔽しようと、勝手に口が動いてしまった。
……何やってんだか。
激しい自己嫌悪に陥る俺に、中沢はなおも追い討ちをかけてきた。
「でもあたし、見ちゃったんだよねー。伸平がここで、昼休みに可愛い女の子とイチャついてるとこ」
「!」
見られてた…のか?
なぜかギクリと体が固まり、言葉が出てこない。
そして──
……浮気したのは誰のせいだと思ってんだよ。
ふと、そんな思いが脳裏をよぎり。
見当違いも甚だしいが、この時の俺はその一点に対し沸々と怒りが沸いてしまった。
で、そのまま己の感情に突き動かされて、何も悪くない中沢をギッと睨み、彼女を刺すような台詞ばかりぶつけちまったんだ。