浮気男に逆襲を!
「バーカ。違ぇよ、フッたのは俺だ」
フンッと鼻を鳴らしながら言うと、誠人は意外そうに目を丸くした。
「……お前、マジで中沢ちゃんと別れたの?」
「ああ。昨日な」
表情を変えない俺と、理解不能って顔でポカンとしてる誠人。
さっきからやけにかみ合わねぇな俺ら。
「何でだよ。あんま目立たねぇタイプだけど、結構可愛かったじゃん。もったいね~」
ああ。そこは俺も認める。
けど、別れた女を褒めたら未練があると思われそうで、素直に頷いたりはしなかった。
そして同時に、また頭上で豆電球が点る。
アイツが俺に未練たらたらだという話にもっていけば、面白いことになりそうだな。
世の中には "既成事実" という言葉があるから、一度 "すがり女" にしちまえば、アイツは半永久的に俺のものになるってわけだ。
そんな安易な考えから、俺はさも真実であるかのように、中沢が俺に泣きながらすがったという大嘘をついてしまった。
この期に及んでもまだ、彼女がどんな反応をするかとかそういうことばかり考えていた俺は、本当にろくでなしだったと思う。
けどもう、自分でもよくわからない感情を制御できなくなっていたんだ。