浮気男に逆襲を!
「ちょっと待てよ!」
「ん?」
くるりと気だるそうに振り返る。
そんな仕草も、まるで映画のワンシーンのように見えた。
「……凛花に何か用でも?」
あえて中沢を下の名前で呼んで、キッと睨み付けてやる。
すると岩崎は、涼しい笑みを浮かべながら射抜くような目で俺を見た。
「それ、君に言う必要ある?」
その一言で直感した。
コイツ……中沢に惚れてんのか。
思わず舌打ちしてしまう俺に、岩崎はその端正な顔から笑みを消して鋭い目を向けてきた。
「お前さぁ。中沢ちゃんのこと一方的に捨てたくせに、よくそんなこと言えるな」
「あ?」
「随分なこと言ってたじゃん、昨日」
昨日って……まさか、あれ見られてたのか?
ギクッと固まった俺を冷たく見据え、岩崎は形のいい唇をなおも動かす。
「おまけにすがり女だのストーカーだの、変な噂広めやがって」
「……ッ、それはあんたに関係ねぇだろ!」
つい声を荒げてしまう。
なぜか、この男に対しては冷静でいられなかった。