浮気男に逆襲を!
俺は一体、何に対して怒(いか)ってんだ?
アイツに言い負かされたからか、それとも…
アイツの中沢への気持ちを知ってしまったからか。
「渡せねぇだと…? ふざけやがって」
憎々しげに呟いた後、ハッと気付く。
ここまで気付けなかったことが不思議なほど、ハッキリと自分の中にあった1つの想いに。
「……まさか……」
面白半分で付き合ってた女に、本気になっちまったっていうのか?
そんなバカな話があるかよ。
ハハッと嘲笑をこぼす。
だが──
"俺、中沢ちゃんのこと本気だから"
岩崎の言葉が脳内でリピートされた瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「俺だって……てめぇになんざ渡せねぇよ」
ようやくわかった。
何であんなに、あの女に興味があったのか。
何であんなに、躍起になって振り向かせようとしていたのか。
──全ては、アイツのことが好きだから。
たどり着くのが遅ぇんだよと自分で自分をぶん殴ってやりてぇところだが、過ぎたことはもうどうしようもねぇからな。
ひとまず今は、中沢とやり直すことだけを考えよう。
と、俺は真っ赤に染まった拳を強く握った。