浮気男に逆襲を!


フッと勝ち気な笑みを浮かべ、一瞬だけ俺の方に視線を向ける彼女。


明らかにあてつけっぽい今の発言に、俺は思わず眉をひそめた。


だが、中沢は笑顔のままさらに続けた。



「何か妙な噂が蔓延してるみたいだけど、あれ事実無根だから」



その発言に納得したように頷くクラスメート。


周囲から不思議そうな目で見られた俺は、なんだかバツが悪くなって舌打ちしてしまう。


まぁ元はといえば、ありもしないことを吹き込んだ俺のせいなんだけどよ。


自己嫌悪に陥りつつも、この俺に恥をかかせた中沢をつい睨んでしまう。


なのに彼女は、朝と同じく楽しげにクスクス笑うだけ。


なんだよ……何がおかしいんだよ。


イライラが押し寄せる。


と同時に、先程までぐるぐる考えていた問題に答えが出た。


間違いない。コイツは今、俺に復讐しようとしてる。


だから初対面の男と付き合うことを決めて、噂を真っ向から否定したんだ。


クソ……人の気も知らねぇで。


これじゃ、正直に打ち明けたところでフラレるに決まってんじゃねーか。


すがり男になるなんてまっぴらごめんだ。


しゃあねぇ。今はひとまず、水面下でじっとしてるに限るな。


……って、俺は忍者かよ。


いたたまれない空気の中、脳内でそんなくっだらねぇ冗談を呟き苦笑する、なんともザンネンな朝を過ごす俺であった。


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