浮気男に逆襲を!
「本気で好きなら、手放すべきじゃなかったんだよ。あたしのこと」
いささかうぬぼれ気味な発言かなぁとは思いつつも、諭すような物言いで至極もっともな本音をぶつける。
すると、伸平はうぐっと言葉に詰まり、さっきよりも激しく拳を震わせた。
おーおー。返す言葉もないってか。
なんて分かりやすい。
「てゆーかさぁ。人のこと実験台扱いしといて、よく軽々しく好きなんて言えるね」
きろっと目を細めて腕を組むと、ますます表情を曇らせるザンネンヤンキー。
その額に浮かび上がった玉のような汗は、後ろめたさと焦りの証と考えていいでしょう。
「しかも、彼氏がいる女に無理やり手ぇ出そうとしたりとか……マジ何なわけ?」
この前と同じように、毛虫を見るような目で冷めた一瞥を送ってやる。
それが効いたのか、伸平はギクッと体を強張らせて視線を逸らした。
よしよし。いい流れ。
それではこれより、作戦の最終段階に移行するとしましょうか♪
フッと不敵な笑みを浮かべ、あたしはじりじりと伸平との距離を詰めた。
明らかに困惑した顔付きになる彼にニッコリと微笑みかけ、『あ。ワタシ全然怪しい者じゃないですよぉ』的に安心させた次の瞬間──
「これでもくらえっ!」
目にも留まらぬスピードで瞬時に奴の背後に回り、爛兄直伝の4の字固めをおみまいしてやった。