浮気男に逆襲を!


「俺が、悪かったよ…。お前の気持ちも結衣の気持ちも無下にして、本当に最低なことしたと思ってる」



あたしの腕の中で、ボスらしからぬ弱々しい声を発する伸平。


あらら。すっかり形無しねぇ。



「もっと早く気付いてたら…とか、感情的になって結衣に乗り換えたりしなければ…とか、今になってすげぇ後悔してる」



フッと自嘲気味に小さく笑う。


その寂しげな横顔を見て、ほんの少ーし頭が冷えてきたあたしは……



「後悔するような生き方してちゃダメだって、身をもって知れたならよかったじゃん」



ゆっくりと腕を離し、トンッと伸平を軽く突き飛ばした。


そして、キョトンとした間抜け面で振り返った奴のツンツン頭を苛立ち紛れにぐしゃぐしゃとかき乱してやる。



「な…何だよ」



困惑したような声を漏らす伸平に、あたしは仏頂面のままフンッと鼻を鳴らした。



「あたしは、今でもアンタのこと許してないよ。こうやって顔見て話すのもホントは嫌だし、関わりたいなんて微塵も思わない」



大分クールダウンした低めのトーンで吐き捨てると、彼は何かを諦めたような笑みを浮かべた。



「分かってるよ…。本当に、ごめんな」



綺麗にセットされた髪が乱れ、顔付きも見る影もなく情けないものになってしまった伸平の姿に、あたしはつい失笑してしまう。


ったくもー。最初っからそうやって素直に謝ってくれてれば、お互いこんな苦労しなくて済んだってのに。


苦労は買ってでもしろって言うけど、こんな苦労ならもう勘弁ですわ。マジで。


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