不良リーダーの懸命なる愛
最終章

不在

それから二日後の朝ーー




私はいつもの通い慣れた道を一人歩いていた。


ここ数日は急に気温が高くなり、最高気温が28度と7月上旬にしては暑いくらい!


朝は爽やかで過ごしやすいけど、
陽射しが強くなったのを感じる。


今日はベストはいらないよね。ブラウス一枚で来ちゃったけど。


朝から蝉の鳴き声も聴こえてきた。


そんな中、私は今日も思っていた。





今日は霧島くん学校来るかな…?






実はあの騒動以来、彼とは連絡が取れずにいた。


保健室で倒れて病院へ運ばれたその日の夜に、
霧島くんからメールは来たんだけど…。





【件名:咲希へ


突然倒れてびっくりさせて悪かった。


今ようやくヨシミ&病院から解放!


心配してるよな?ただの風邪だから。



あと傷の治療もやってもらった。


ちゃんと治すから。だから安心してくれ。



理人より】





というメールだった……。


“風邪” ……ってあったけど、本当に風邪なのかな?


それに霧島くんから来たあのメールの時間、夜遅かったし…!



あれから霧島くんにすぐに返信したけど、それ以降の音沙汰は無い。


きっと熱のせいで動くのが辛いんだろうな。


でも私にはあの急激な熱は、ただの風邪とは思えなかった。


あの様子からして、もしかすると笹原さんにやられた傷と関係あるんじゃ……。


炎症を起こしたのかもしれない。


私はそんな予感がしてた。


「今日学校来なかったら、またメールしてみようかな?」


目の前に浮かぶ入道雲を眺めながら、そう呟いた。








「おっはよーー!!咲希!」


教室に入るとちーちゃんが私の肩をポンッと叩いて弾んだ声で挨拶してくれた!


「おはよう、ちーちゃん!今日は朝練?」


「アタリ!実はさ、……ジャーーン!!見て見て、このシューズ!!」


と、ちーちゃんが取り出したのは真新しい運動靴だった!


「どうしたの、これ!!?」


いかにも高そうなシューズで、私は面食らってしまう!


「いや~。それがさ、あたしは “いい!” って遠慮したんだけどさ、」





と、そこへ!!





「二ノ宮さん!!いらっしゃる!?」



あ!!



あの子は確か、ちーちゃんの陸上部のライバルの方!




「さっそく出たよ…。ハイハイ!!ここだよ、あたしは!!」



するとライバルの子がツカツカとちーちゃんの元へ歩み寄ってきた。


「どうかしら?気に入って頂けたかしら?そのシューズ。」



え!?



まさかちーちゃん、



この子に貰ったの!??



「いや、あの、実は………まだ履いてなくてさ!アハハ。」


「あら、どうして?!あんなに欲しがってたシューズじゃない!!そんな遠慮なさらないで!」


「でもさ……、インターネットで調べたんだけど、このシューズめちゃくちゃ高いじゃん?!だから、ちょっと履けなくて……。」



ちーちゃんが珍しく渋ってるよ!!



するとライバルの子も私と同じことを思ったのか、目を丸くして言った。


「二ノ宮さん、貴女ちょっと変よ!? “遠慮” という言葉とは無縁な貴女がっ!!何を躊躇う必要があるの!?これは先日、貴女を疑ってしまったお詫びだと言ったはずよ?いいから、受け取って?ワタクシの気がおさまらないわ!」


「……アンタ。あたしを馬鹿にしてるでしょ?!」


「まっ!見かけ通り失礼な人ね!」


「なんだって!?それはこっちの台詞だっての!!」




ギャアギャア!!





…………えっと。



この争いっていったい…。



困り果てていると、


「おはよう、咲希ちゃん!……あれ?千枝ちゃん達、今度はどうしたの??」


と、唯ちゃんが登校してきた!


「唯ちゃん!いや、私にも何が何だかさっぱり…。シューズを履くか履かないかで、もめてるみたい……?」


「そうなんだ。なんだか、相変わらず……って感じだね。」





私達はしばらくその二人のやりとりを見守っていた…。
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