不良リーダーの懸命なる愛
なぜかそんな事を訊きたくなった。

「あぁ。さっきの悪ガキか。ん~、そうだね…。とりあえずナイフをしまわせるかな?」

「…………どうやって?」

「子供には危ないからね。私がナイフを取り上げて、彼等が疲れ切ったら返してあげるかな?それでしまうだろう。」

「……………なんでそんなまわりくどいことすんだ?」

「まわりくどい?どこがだい?」

「殴っちまえば簡単にケリがつくじゃねぇーか!てめぇのやってることは無意味だ!!」
なんで俺、こんなにムキになってんだ?
たかがこんなオッサンに対して。


「そうかな?」


オッサンがこっちを真っ直ぐ見てくる!

「確かに君の言うとおり、殴ってしまえば早いかもしれない。でもね、私は社会人なんだ。家族もいる。護るべき人達がいる。だから君の言う簡単な方法は使うべきじゃない。」

「…………!」

「それに、なにも力がある奴が強いんじゃない。大切な人を護れるかどうか……。それが本当に強いということだ。」

「大切な人を護れるヤツが強い?…ハッ!!きれいごとダナ!そいつに力がなけりゃ、終わりじゃねぇか!」

「……君は大切な人はいないのかい?」

「いねぇな!そんなもん、いてたまるか!!オッサンにいいコト教えてやる。人間なんて誰かを裏切る生き物なんダヨ!世の中の大人も、ダチも、家族もみんなそうだ!!!自分が不利益になるとみなせば簡単に捨てやがるっ!!!そういうモンなんだよ!!!!!」

なんだよ?どうしちまったんだ、俺は?!

こんなオッサン一人、放っとけよ!


「悲しいな、君は。」


!!?


「いざという時に大切な人を護れるヤツ。そういうヤツが本物の強さを持ってるんだ。君はそういう面ではまだまだ半人前だな。」

「……んだとッ!?」

「人を信じられなくなる。そしてその人自身が腐っていく。そしたら君の人生はそこで終わりだ。」


「ーーーッ!!!」
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