不良リーダーの懸命なる愛
「ま、待てって!!」

「ん?どうした?今日はやけに絡んでくるな?」


た、確かに……。


「か、絡んでなんか…ねぇよ。ただ………。」

あぁ~何が言いてぇんだよ!俺はッ!!

「……君は、中学何年生だい?」

「え?あぁ。中二だけど。それが?」

するとオッサンは満面の笑みで俺を見た。

「そうか。俺の娘と同じだな!咲希っていうんだけどな、可愛い娘なんだ!きっと君も可愛いと思ってしまうよ?」


娘の自慢かよ!


「そうかよ。……ちなみに、ずっと聞き忘れてたけど、オッサン、名前なんつーの?」

「鳴瀬だ。鳴瀬龍也。」

「なるせ…?」

「そう!鳴くほうの鳴瀬だ。」

「なく……ほう???」

オッサンは俺の顔を見てクスクスと笑っていた。

「……いま俺を馬鹿にしたダロ?」

思わず睨みつける。

「してないよ。ただ…君には憶えといてもらいたいことがある。」

オッサン……なるせさんは、急に真剣な表情で俺に言ってきた!

「地位や名誉がある人間が、なにも偉いんじゃない。人の器は、学歴じゃ測れない。」

「…………。」

「君はまだ若い。色んな希望もいっぱい持ってるんだ!それを君自身が気づかないだけなんだ。」


「………希望。」


「そうさ。君は、君の知ってる大人よりも、もっと器がデカイ大人になれるよ?青少年くん?」

「…………。」

「そうだ。君の名前は?」

「霧島理人だよ。なるせのオッサン。」

「ハハッ。じゃあ理人くん、またな。」


そして俺は、なるせさんと別れた。


だけどこの日を最後に、
なるせさんとはもう二度と会うことは無かった。



この数年後、俺は知ることになる。

なるせさんが俺と会った数日後に交通事故で亡くなったことを…。

一人の少女の命を救ったことを……!
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