不良リーダーの懸命なる愛
第三章

朝の騒動

翌日ーー





久しぶりに雨があがって今日は曇り空。


天気予報だと今日一日は曇りという予報だけど、湿度が高くて少しジメジメしている。


もうすぐ夏がくることを予感させる、そんな天候だった。






今日は朝から体育なんだよね。バスケ苦手だな~。


そんなことを思いながら下駄箱につくと、クラスメイトの女の子たちがいた。



そこへ、走ってきた別の女の子が何やら興奮したように、その子達に話しかけている。



「ねぇ!霧島くん今日は朝から学校きてるってーー!!」


霧島くん?


“霧島くん”の名前に思わず反応してしまった私。


「ウソッ!!!マジで!?ちょーー会いたいんですけど!!」


「5組にいるって!!」


「はやく、はやく!!」



バタバタバタ…




女の子達はものすごい速さで走っていった……。


霧島くん、かぁ~。


その名前で昨日のことを思い出す。




『俺の仲間がやったことだから、責任は俺にある。』





不良なのに面倒くさがらず、自分の責任だと言って図書室で一緒に片付けを手伝ってくれた。


それに薬をあげたとき、ふいに優しく微笑んだこともあったな。


あ、でも薬を渡すとき、
微妙な間があったような…。



もしかしたら霧島くんにとって、私のしたことは迷惑なことだったのかもしれない。


でも、霧島くんはそんな様子を一切見せなかった。


そのことが意外でもあり、


私は素直に嬉しかった。



でも、よくよく考えてみるとやっぱり私、余計なことしたかも……。



あれじゃ、ただのお節介女だよ。



う~ん。




でも…とりあえず、熱下がってればいいな!



そうだよ、大事なところはソコ!



それで万事OK!!



気を持ち直して、教室へ向かっていると…。



ん!?




え!!?




なんなの!?あの人だかり!!!




5組の教室に人……


というか女子が群がっている!!



廊下まで溢れてるよ……!



いったい何があったんだろ?!



その光景に呆気にとられていると、登校してきたちーちゃんが私の肩をポンと叩いた。


「おはよ!咲希!どうしたのさ、こんなところでボーっとつっ立っちゃ……………え?!!何あれ!!うちのクラスに人がいっぱい!!!」


ちーちゃんも気づいたみたいで、動きがとまってしまった!


2人で固まって見てると、女子がまたどんどん私達のクラスに集まってくる……!


よく見ると、1年生だけじゃなくて、2、3年の先輩も居て必死に教室の中を覗こうとしている!



「ど、どうする?これ……。人がまた集まってきてるし…。」


「だよね……。それに見るからに、あたしら教室に入れないし。~~っ、それにしても何なの!!?この騒ぎはっ!!」


集まってきてる女子は、黄色い声を出して熱気に包まれている。


「な、なんだか……、すごく盛り上がってるみたいだね。でもとりあえず、誰かが倒れてるとか、悪いことじゃないみたいだから良かったよ…!」


「ちょっと!何言ってるの咲希!!相当悪いでしょ!!迷惑こうむってるの、うちのクラスの人達じゃない!!」



あ。



そうだった!




クラスメイトも何人か廊下にいて、中に入れずかなり困ってる様子……。


しばらく私達はその場で見ていたけど、とうとうしびれをきらしたちーちゃんが私の手を掴んだ!



「咲希!こうなったら突入するよ!!」


「え!!?で、でも、押し潰されちゃうんじゃっ!?」


「なんであたしらが自分のクラスに入れず、ここで見物してなきゃならないわけ!?アッッタマきた!!かき分けてやるっ!」



ち、ちーちゃん…。




ついにキレちゃったよ……。




こうなるとちーちゃんの勢いは止まらない!



ズンズン進んで行き、教室にいる女子の間をぬっていく!!



「ハーイ、すみません!ちょっと邪魔なんで通して下さいねー!」


次々とお構いなしに、先輩だろうが関係なく女の子を退かしていく!


「キャッ!ちょっと!!何なのよ、アンタ!!」


「そうよ、押さないでよ!!」


するとちーちゃんはキッと睨み返し言い放つ!


「あなた達こそ何なんですか!?人のクラスに押しかけてて!クラスメイトが教室入れなくて困ってるの、見てわかりませんか!?」


ちーちゃんの逞しさに圧倒されてしまう!


今度から姉御と呼ぶべきだろうか?


ちーちゃんに尊敬の念が沸き起こっていたとき、教室の窓辺から怒号が聞こえてきた!!


「お前ら、いい加減自分のクラスに戻れよっ!!!」



え…?



こ、この声って、まさか!!



「何よ、理人ぉ~。ツレないんだから~。」


「そうよ!そんなに怒らなくてもいいジャン。ね?理人っ!」


「オイッ!気安く触んなって何度言えばわかんだよっ!!」


“理人” ……って、やっぱり霧島くん!?



え、なんで!?



なんでうちのクラスにいるの!!?
< 16 / 151 >

この作品をシェア

pagetop