不良リーダーの懸命なる愛

謝罪

「俺にまとわりつくなって何度言えばわかんだよっ!」


「えーーー!だって理人の側にいたいんだもん!」


「もう~理人どうしたの?前は色々遊んでくれたのにぃ~。このごろ変じゃなぁい?」


「最近全然かまってくれないから、ウチら、ちょーつまんないんダヨ?」


「そうだよ!CLUBにだって全然顔だしてくれないジャン!」


クラブ?



クラブって部活のことだよね??



霧島くんって部活入ってたんだ!



そ、それは驚きだな!



でもそれはよくないよね…。



サボりは。


「この際ハッキリ言っておく!俺はもう顔ださねー。それに、お前らも俺ばっか追っかけてねぇで、他をあたれ。」



え?霧島くん部活辞めるの?!



随分、急な話だな。



「っ!!?」


「ど、どういうことそれ……!!」


「理人……嘘でしょっ!!?」


「まさか、彼女できたの!?だからウチ
らの誘いに乗らなくなったんだ!?」


「でも!彼女いたって、前だったらウチらと遊んでくれたジャン!!」


矢継ぎ早に女の子達から質問が霧島くんに飛んでいる…。



「り、理人、考え直してよっ!!お願い!!!アタシ、マジで理人のいない生活なんて、考えられないもん!!ちゅ、中学のときからずっと……っ理人だけだもん!!!!」


その時、霧島くんを取り巻く女の子の中でも、
一際かん高い声が教室中に響き渡った…。



「…笹原。悪いが俺はもう、他のオンナには興味ねーんだよ。わかってくれ。」


「っ!!そ、そんな!!!」


笹原さんという金髪の巻き髪の子が泣き出してしまったようで、人と人の間からかろうじてその姿が見える!



「とにかく、笹原も他のやつらも教室に戻れ!!」



ピンと張りつめた空気が漂う。


「ーー…っアタシ諦めないから!!どうせ彼女つくったって、またすぐ別れるに決まってるんだからっ!!!」


すると笹原さんがこっちの方へ走り出して、私達を退かして教室から出て行った!


「里菜!待って!」


「ウチらも同じだからね、理人っ!!そんな簡単に理人を諦めないから!!」


「そうよ!それに理人はオンナに本気にならないことくらい、ウチらだってわかってんだからねっ!!」


そうして霧島くんの周りにいた集団は、人垣を強引にかき分けて教室から出て行った……。




な、なんという、重苦しい空気………。





他の女の子達も、その空気に耐えられなくなってきたのか徐々に教室からいなくなったり、遠まきに彼を見ている。


「はぁー!もう~清々する!!やっと人口密度が低くなったわ! “追っかけ” は結構だけど、人の迷惑も考えなさいよね、まったく!!!」



わっ!



ちーちゃん!!




そんな大声で言ったら霧島くんに聞こえ…!



その時。



ガタッと霧島くんが立ちあがり、私達に近づいてきた!!



ちーちゃんもそのことに気づいたのか、しまった!!
と口に手を当て、近づいてくる霧島くんに対して身構える!



私はただただ足がすくんでしまっていた!



霧島くんが私達の目の前に立ち、その第一声は………。



「悪かった…。あんたらに迷惑かけて。」



…………え?





「………へぃ??!」



と、ちーちゃんも私と同じ心境らしく、素っ頓狂な声を出して続けて言った!


「え?!いえ、あ、あの、別に、霧島くんが、謝ることではないと、思うんだけど!?」


ち、ちーちゃんが少々パニックになっている!



「俺、元々ここに用があって、このクラスで待たせてもらってたんだよ。したら、こんなことになっちまって……、マジで迂闊だった。クラスの連中にもヤな思いさせて、悪かった。」


そう言って、霧島くんが頭を下げてきたっ!!!




ギャー!!



霧島くんが謝罪の、


お、おおお辞儀を!!




ちーちゃんはというと、驚きを隠せないのか、口を開けたまま霧島くんを凝視していた!



その時、



私の脳裏にあることがよぎる…!


それは昨日の図書室の一件。


霧島くんと不良仲間の先輩達との会話で、なんとなく悟ったことがある。


それは、霧島くんの存在が不良仲間から一目置かれている、ということ。


だから昨日の今日……


ということもあって、私はこんなことで霧島くんに頭を下げさせてしまったことが、なんだかとても申し訳ないように思えてしまった…。



これじゃ、霧島くんの面目がなくなっちゃうよ!



不意にそんな思いがよぎった!



「……き、霧島くん!あの、頭をあげて下さい!その、確かにさっきの状況は私達にはどうすることもできなくて困ってたけど、でも結果的に霧島くんが騒ぎを抑えてくれたじゃないですか!だから、その、謝る必要なんてないんですよ…?」



気がつくと無我夢中で私は霧島くんに話しかけていた。



すると、霧島くんが頭をあげてまっすぐ私を見る!


その威圧感に思わず一歩後ろに下がってしまう!


冷や汗が出てきて額に汗がたまる!



ま、また、余計なことしちゃったかも!!?



そう思ったときだった!



「………サンキュ。やっぱり優しいんだな、鳴瀬は…。」



と、私を見て霧島くんは微笑んだ。




あ!!




霧島くんが笑っ……




「ええぇーーーーーー!!!!」



と、その時ちーちゃんが発狂っ!!



私と霧島くんは突然のちーちゃんの発狂に、ビクッと反応して思わずちーちゃんの方を見てしまった!!



「……どうしたんだ?鳴瀬のダチ。」


発狂して、“ウソー!”とか、“まさか!”など、ちーちゃんが何やら独り言で盛り上がっている…!



ほ、ほんとにどうしちゃったんだろ……、ちーちゃん。


霧島くんの迫力でおかしくなっちゃったのかな……?


すると霧島くんが、私に向けて左手をさしだしてきた!



え!?な、なに!?




突然のことに身構えてしまう。


「コレ…。薬返そうと思って、それで鳴瀬の席で待ってた。」



あ!



よく見ると、昨日私が霧島くんにあげた薬の箱があった!



「その…………嬉しかった。薬もそうだけど、こうして鳴瀬と話せたことが。」



………へ?



いま、なんて?



話せて嬉しい??



誰と?



…………って私と!!??



そう言って霧島くんは、私と目が合うとまた微笑んだ……。



そして気のせいかもしれないけど、霧島くんの頬や首がほんのりと赤く染まっていた。
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