不良リーダーの懸命なる愛

過去

この緊張を打破しようと思考を巡らしていると、私にある閃きが降りた!!



あ!!




そういえば私、霧島くんに訊きたい事があったんだった!


「あの、霧島くん!霧島くんに質問があるんですけど、いいですか?」


「ん?なに?」


さっきの……訊いてもいいかな?



「えっと………広場での霧島くんの様子がおかしかった事がずっと気になってたんですけど、その……あの時、体調でも悪かったんですか?!」


「広場?………あぁ、あれか!咲希を泣かす前の俺の態度だろ?」


「あ……は、はい。」


「アレはさ、少し反省してたんだ。…自分の事で。」



え……?



反省??




「俺さ、その前に咲希を悪く言った女子にキレちまったじゃん?それで反省してた。あんな脅しみたいマネして、結果的に咲希を護れたことになってねぇーんじゃねぇかって……。」



霧島くん……。




その時私は初めて、陰が落とされた霧島くんの表情を目の当たりにした。



「あんなんやっても、咲希が傷ついちまったら意味なんかねぇしさ。」


そんなことないのに。


ちゃんと護ってくれたよ?


「………俺、昔から喧嘩しかしてこなかったからさ。……中学ん時は売られたら必ず買って何倍返しが当たり前だったし。腕力が唯一の俺の武器っつーか……。“力” しか信じるもんも無かったからな、あの頃は。かなり腐ってたな………。無茶なことも沢山したし……。リンチなんて何度もくらった事あるもんな、俺…。」


私はただ黙って、彼の話を真剣に聞いていた。



ただ真剣に…。



「でも、ある時……“ある人”に言われたんだよな。『人を護れるヤツが、本当に力のあるヤツなんだ』って。それで色々と気づかされたな!」



ある人……。




その人が霧島くんを変えた人…?



「でも俺、まだその言葉の本当の意味を掴めてねぇのかもしれねぇな…。だからとりあえず、自分の中で決めてるコトがある!無駄な喧嘩や争いは絶対しねぇことを。それを食い止めることで周りの連中も傷つかねぇってことはよくわかったからさ。」



うん……。



そうだね。



彼の真っ直ぐさが伝わってくる……。


「俺さ、咲希を本当に護れるようにもっと強くなってみせるな。だから……その……側にいてくれないか?」


「はい!居ますっ!!応援しますっ!!一番近くで応援します!!!」


彼が初めて自分をさらけ出してくれたみたいで、私は凄く嬉しかった…!


そして何より彼の力になりたいと心からそう思った!



「マジで?……ありがとな。」



あ…!




笑った!!




霧島くんは照れた顔で、少し赤くなっていた…。


「それに霧島くん、大丈夫ですよ!霧島くんは何度も私を護ってくれてますし!」


「……え?」


「覚えてますか?私が雷で怖くて仕方なかった時、霧島くんがブレザーで覆ってくれて、抱きしめて落ち着かせてくれたし!あと、図書室の件もヤスさんから訊きましたよ?私を助けようと必死になって駆けつけてくれたって!」


「…………。」


「それと、今日のことだって、私を庇ってくれて嬉しかったです!だから脅しなんかじゃないですよ?」


「…………。」


「それに、霧島くんから護られてるのは私だけじゃないです!きっと霧島くんの周りの人だって、霧島くんに助けられてると思います。だからみんな、霧島くんを頼って、それで人の輪ができるんだと思います。」


「…………。」


「霧島くんに自覚は無いかもしれないけど、みんな霧島くんに救われてる部分が必ずあると私は確信します!だって私もそのうちの一人だから…。」


そう。


霧島くんは自覚してないだけで、私も何度も助けてもらった…。



そう思ったら心がほっこりと温まってゆく。



霧島くんのおかげでこんな気持ちになれたんだ!


頬がゆるみ、嬉しくて、霧島くんに顔を向ける。


「だから人を護れる力は霧島くんは持ってます!私が保証しますよ?」



そして私は知らなかった……。



霧島くんが熱をはらんだ瞳で私を見つめていたことを!



そんな彼に私は気づくわけもなく………。







「………キス。」



「え?」



「キスしてぇ。」



「……………………………は?」



突拍子もない霧島くんのその発言に、
私の思考回路は完全に停止してしまった……!!


なぜいま………


きすの……


はなしに…………


なるのだろうか…………………
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