不良リーダーの懸命なる愛

逃避行

キーンコーンカーンコーン






な、なんとか乗り切った……。



無事数学の授業が終わり、ホッと一安心していると、ガヤガヤと廊下が騒がしくなってきた。



あ……。


体育から戻ってきたのかな?


ちらほらとジャージを着た男子がうちのクラスの前を通り過ぎ、自分たちのクラスに戻っていく。


サッカーだったからか、みんなけっこう汚れていた!



その中で思わず探してしまう人がいる。




霧島くん、来ないかな?




そわそわして廊下の行き交う生徒を目で追っていると…。



「咲希、さっきは災難だったね…。あんな空気読めないおバカが校庭から吠えてくるなんて……。まったく!!吉先が勘違いしてくれなかったら今頃どうなってた事か!!!」


気が付くとちーちゃんと唯ちゃんが私の側にいた!!


意識が廊下の方へいってたので、私はちーちゃんの話にすぐ反応できず……。



「え!?………………あ、そうだね!准平くんには驚かされちゃったよ!ほんと。」


するとちーちゃんがすかさず私に訊いてきた!


「………咲希。まさかとは思うけど、霧島王子待ちだったりする?」




ギク!




「え!!?な、な、なんで!?べ、べつに待ってなんかないよ?!うん、全然!つ、次の授業の準備をしなきゃな~って!」


「……咲希ちゃんって、結構わかりやすいんだね。」


と、唯ちゃんが苦笑いしている。



へ!?何が!!?



するとちーちゃんがニヤリと笑って、


「咲希……誤魔化したって無駄よ!自分の気持ちに素直になりなって!霧島王子を待ってんでしょっ?!会いたいんでしょ?!声を聞きたいんでしょ?!!ハグしてもらいたいんでショ!!!あたしらには全部お見通しよっ!!」


と、ちーちゃんが私の肩に手を置いて、私の気持ちを見透かすような眼で見てくる!



うっ…。


ちょっと図星かも。


ハグのところ以外は……。


観念して思ってることを二人に打ち明けた。


「いや……その………なんだかね、霧島くんのことを…妙に気になっちゃったり……っていっても少しだけなんだけどね!?それで…あとは……無意識に霧島くんの姿を探しちゃったり…………………………なんかして!!あはは!変だよね?」


どうも気恥ずかしくて、二人の前でもハッキリ言えず、笑ってまた誤魔化そうとしてしまう!



そんな私を見た二人は顔を見合わせ、
そしてなぜかテンションが急にMAXになった!!


「きゃあ~~~!!ついに、ついに!鈍感の咲希ちゃんがここまで来るなんて!!やっと霧島くんにオチたのね!!?」


え?!


なにごと?!



唯ちゃんが頬を染めて感激の頂点へ……!


「咲希ぃぃ~~~!!!この日をどんなに待ち望んだことかぁ!!!お母さんは嬉しいよおぉぉぉ!!!うわぁーーん」



ひぇ!!


ちーちゃんが号泣してる!!



どうしちゃったの?!



「ちょっと?!二人とも!?落ち着いて…!!」





と、その時。





「咲希のダチ、今度はまたどうしちまったんだ?」




え?




聞きなれた声のほうへ顔を向けると……。


「よ!お疲れさん。」


「ひゃあぁ!!!」



不覚にも、またもや突然の霧島くんの登場に悲鳴をあげてしまった……。



「ハハッ!悪ぃ!また驚かせたか!!」


そんな霧島くんはサッカーの後……ということもあって、
いつもより髪の毛が乱れていて、そこから雫がポタポタと落ちていた!



こ、これは!!



ちょ、ちょっと、目に毒かもしれない……!!



霧島くんの異常なフェロモンに直視できない私がいた!!


顔に熱が集まってくる…!


何処を見てよいのか視線をさまよわせていると……。





「キャーー!!霧島くんよ!!」


「うそぉ!!またウチのクラスに来てくれたぁ~!!!」


「本当に芸能人みたいだよね!!カッコイイ!!」


「最近、けっこう朝から学校にいるみたいよ!?」


「も~~~ウチの彼氏になってほしい!!」



うわ!!



す、凄い歓声だな…!



教室が一気に騒がしくなり、うちのクラスの女子はパニック寸前になっている!


あ、そうだった!!


霧島くんが通ったり、その場に居るだけで、こんなにもたくさんの人を惹きつけることを忘れてたよ!!



すると、



「咲希!ひとまず霧島王子を連れて教室を出た方がいいって!」


ち、ちーちゃん!?


涙と鼻水が一緒に流れ出てる!!



「とにかく早く!プチ逃避行しなっ!!」


そう言ってちーちゃんが背中を押してくれた!


「そうだね、ありがと!……霧島くん、とりあえず教室から出ましょう!」


「あ、あぁ。そうだな?」




私達は教室から出ると、廊下の隅へ行き、ひとけの無い階段前まで来た。



「ここなら大丈夫かな?」


人がいないか辺りをキョロキョロと見回していると……!





ノシッ





ん!??




背中に重み………を感じる……。




ということは!!




まままさか、こ、この感覚って……!!




ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには……………。





「捕まえた。」




霧島くんが不敵に笑い、私に抱きついていた!!!



や、やっぱりーー!!
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