不良リーダーの懸命なる愛
第十章

不相応

「随分遅くなっちゃたな!霧島くん、待ってるよね!?」


私は中庭まで走りきると、息が上がって、足がとまってしまった。



「はぁ、はぁ。……霧島くん、何処だろ?!」



広い中庭を見渡してみる。




すると。




あ!



霧島くん!!




木の幹からオレンジ色の目立つ髪が見えて、寄りかかっている彼を発見した…!



「霧島くん!!」



私は急いで側まで駆けて行くと、彼の名前を呼んだ!



でも!






え…………………。






振り向いたその人の顔はひどく冷たく、無表情だった。




こ、この人、


霧島くんじゃない!!?




間違えちゃったかも!?



「ご、ごめんなさい!人違いでした………!!」


頭を下げてあやまり、そそくさとその場を去ろうとすると……。






「鳴瀬。」






え…………?






…………今の声って、霧島くんだよね?




たった今霧島くんと間違えた人の方からその声は聞こえてきた……。


一瞬疑ったけど、勇気を出して振り返ってみた。



「鳴瀬。何処行くんだよ。」


「きり…しま……くん……?」


「ナニ驚いてんの?」


「だって………なんか、雰囲気がいつもと……どことなく……違う気が、したから………。」


「そうか?普通だけど。」


「え………。」




違う……!



いつもの霧島くんじゃないよ……!




今、私の目の前にいる彼はまるで別人のようで、
私はまだ彼が霧島くんだと完全には思えなかった……!!


そのぐらい何かが変わってしまっていて、私は目を見張った!!


でも、声とか格好は霧島くんそのもの。


だから疑う余地は無いこともわかってる……。



でも、彼の佇まいはいつもの彼と比べるとあまりにも違いすぎる!!


纏(まと)っている空気は決して軽々しくは話しかけることはできない!



そんな雰囲気だった……。



ほ、本当にどうしちゃったの……?


具合でも悪いのかな!?


私はそんな彼の変わりようについていけず、動揺を隠しきれないでいた!!


またそれ以上に私は、霧島くんに対して少し恐怖を感じてしまっていた……!



なんでだろ…?


霧島くん相手に手先が…震えて……!



ギュッと拳をつくって握りしめ、震えを誤魔化す。




気のせいだよ!




霧島くんは怖くない!



いつも優しかったもん!


あ、そうだ!!


きっとあまり体調が良くないだけだよ!!


誰しもそういう時ってあるもんね!?


仕方ないよね……?



そう自分に言い聞かせる。




しかし、




「話。していいか?」



「え?……………ハ、ハイ!」



突き刺すような霧島くんの声に、ただ反応するのが精一杯で……。


そうだった!


話があるんだよね!?



邪魔しちゃった…。


改めて霧島くんに向き合い、姿勢を正して話を聞く体制に入る。


心臓がドキドキして、汗もジワリと出てきた。



「話は………………、」


「…………。」


「その………………………、」


「…………。」


「…………………………………、」




あれ…??




霧島くんの歯切れが急に悪くなり、どうしたもんかと戸惑ってしまう。


「………あの、霧島くん?」


たまらず彼に話しかけてしまった。


すると、霧島くんはピクッと微かに左肩が上がり、
そして何か意を決したように視線を上げて、
私を見据えてきた!



「……鳴瀬。俺が話したいことは、」



「え………?」



その時、何かおかしいと思った。



何かがズレている……。


そんな “違和感” を感じた。


そして霧島くんは一言、私に告げた。







「ダチやめねぇか。俺たち。」




「……………………………え?」





友達を……………






やめる…………??






霧島くんの言ってることがすぐに理解できずその場で固まっていると、
さらに私は霧島くんから追い打ちをかけられるような一言を聞かされた……!





「飽きたんだゎ、鳴瀬に。」
< 85 / 151 >

この作品をシェア

pagetop