突発性ヴァンパイア・ガール!
「僕も亜美も、ずっと、ずうっと、ファイを探して旅を続けていた。

その中で僕達は約束したんだ。

二手に分かれてファイを探そう。

探し出したら、連絡して二人で分け合おうね、と。


もし僕とうららが付き合ってそのまま結婚すれば、僕はずっとうららを独り占めできる。

そうすれば亜美とも共有することができる。

そう考えたんだ」


侑也は「いい考えだろう?」と微笑んだ。


「吸血鬼の能力って知ってる?」


亜美が言った。


「見つめただけで、誰でも惚れさせることができるのよ」


私は目を見開いた。


「じゃあ、私が侑也を好きになったのは…」


「私達の計画に乗っ取ってやったこと。

うららが侑也を好きになるよう、侑也が能力を発揮した。それだけのことよ」


亜美は言った。


「まぁ、誤算もあったけれどね」


そしてちらりと吉崎君を見ると、再び私に視線を戻した。


「噂を流したのは、うららを不安にさせるような事件を起こし、うららが侑也に相談するように仕向けることが目的だった。

そうすればうららと侑也との仲をさらに深めさせることができると考えたから。

けれど結局うららは私達の会話を聞いてしまい、うららを慰めたのは、吉崎君になってしまったわね」


吉崎君は眉間にシワを寄せた。


「いいえ、ハンターと呼んだ方がいいかしら?」


亜美は吉崎君を見た。

いつもの亜美らしくない、ニヒルな笑みを浮かべている。


「気づいてたんだな。俺がハンターだと」


「そりゃあ、分かるよ」


侑也はニコニコと笑顔を浮かべて言った。


「それにきみはダンピールだからね。

ダンピールの殆どが吸血鬼ハンターになると聞くよ。

それに吉崎君は僕らのことを鋭い目で見ていたからね」


気づかない方がおかしいよ。


そう付け加えた。


吉崎君は鋭い目で2人を見た。


「じゃあ分かっているよな。

俺がこれからどんな行動を取るのか」


亜美は私の手を離した。


「もちろん。1つに決まっているからね」


侑也は口角をあげながら言った。


亜美と侑也、2人が吉崎君の前に出る。


亜美は右手を腰に当て、侑也は腕組みをした。


「あなたはそのためにここに来たんでしょう?」


亜美も不敵の笑みを浮かべた。


「そうだな」


吉崎君は鉛色の拳銃を片手で持ち、銃口を2人に向ける。


「俺はあんたたちを倒しに来た」


その声は冷たかった。


2人はといえば、笑顔を浮かべていた。


まるで、やれるものならやってみろ、とでも言っているようでもあった。


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