突発性ヴァンパイア・ガール!
「言いたいことは、それだけだ。

まあ、あんたはまだ寅木が好きなんだろうし、最後の言葉は、忘れていいから」


吉崎君は、じゃ、と右手をあげてこの場を去ろうとする。


私はその背中に、「嫌だ」と叫んだ。


大声で叫んだためか、鳥が驚きバサバサと慌てて飛んでいった。


吉崎君は振り返る。


眉間にしわを寄せていた。


「は?」


理解不能、とでも言いたそうな表情をしている。


「勝手すぎるっつーの!

ずっとそばにいるって言ってみたり、好きだって言ってみたり、そうかと思えば、『忘れていいから』?

ふざけるのもいい加減にしろっつーの!」


吉崎君は固まっていた。


私は吉崎君の方へと歩みを進める。


「吉崎くんだけ、言いたいことを言うなんて許さないから!」


吉崎君はまた眉間にしわを寄せている。


私の話もちゃんと聞いてよね、と私は言った。



「私が好きなのは、吉崎くんなの」



吉崎君は目を見開いて固まった。

思考回路が停止しているようだ。


「おーい、吉崎君?さっきの聞いてた?ねえ、ちょっと!黙ってないで…って、うわ!」


突然私を抱きしめた。


しばらく抱きしめると、私を解放した。



「俺も、好きだ」


「うん、知ってる。それさっき聞いた」



私はクスクスと笑った。


穏やかな時間が流れる。


思い返せば、吉崎君は何度も私に希望をくれた。


何度も私を救ってくれた。


私に独りじゃないと教えてくれた。



「吉崎君が好き」


「…知ってる。それさっき聞いた」



私達は見つめ合って、吹き出すように笑った。



明日がどうなるかなんてわからない。


もしかしたら悲しいことが起こったり、怖いことが起こったりするかもしれない。


それでも私は独りじゃないから。


吉崎君がいてくれるから。


だからきっと、大丈夫。


くじけそうになったら、泣きそうになったら、何度だって思い返すよ。


『あんたは独りじゃない』


私に勇気をくれる、魔法の言葉。









                fin.
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