突発性ヴァンパイア・ガール!


放課後になって、私、亜美、侑也の3人で、侑也の歓迎会をすることになった。


言い出したのは、亜美だった。


お店や喫茶店ではあまり長居することができないからと、近くのコンビニでお菓子やジュースを買って、私の家に集まることになった。


「ごめんなさい、うらら。私が言い出したのに、うららのお家にお邪魔することになって」


「謝らないで。亜美は下宿してるんだし、亜美の家に集まれないのは仕方ないよ」


亜美は高校入学と同時に一人暮らしを始めている。


そういうことから亜美はしっかり者になったのかもしれない。


申し訳ない、という顔をする亜美に笑ってみせた。


「それに今日は侑也の歓迎会だよ?そんな暗い顔をしないの。ね?」


そういうとようやく亜美は「ありがとう」と言って思い詰めたような顔をやめた。


「それより、侑也、ごめんね」


「ん?」


「今日の主役は侑也なのに、荷物持ちなんてさせちゃって」


コンビニのレジで私が支払いを済ませると、侑也がその荷物を持ってくれた。

何事もないように、当然のことのように。


「大したことじゃないよ。それに僕は代金を払っていないんだ、これくらいはしないとね」


「お金のことは、後で割り勘って決まったんだから気にすることないのに」


「じゃあ、うららもこのことは気にしないで。こういうことは男の仕事だから」


ね、と微笑まれてしまったら、何も言えなくて。

言葉が詰まった。


「2人とも、私のこと忘れてない?」


ムスっとした声が聞こえてハッとすると、亜美だった。


「もう。侑也ったら、うららが可愛いからって私がいること忘れないでくれないかしら?」


「大丈夫。忘れてないよ、亜美」


「本当かしら?」と疑いの目を向ける亜美を優しい言葉で慰める侑也。


何気ないその会話に、私はドキドキしていた。

だって、侑也、さっき、否定しなかった。


『うららが可愛いからって』


その部分を、否定しなかった。


侑也は優しいひとだから、絶対に、女の子に向かって可愛くないなんて言わないと思うけど。


それでも、嬉しかった。


否定しなかったことが、イコール肯定だとは思っていない。


だけど、否定されなかったことが、嬉しかった。


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