突発性ヴァンパイア・ガール!
しばらく3人で学校のことや、クラスのこと、世間話まで楽しく話していた。


「それにしても」と亜美は言った。


「うららは普段、こんな部屋に住んでいるのね」


素敵だわ、と亜美は目をうっとりさせて見渡した。


「そんなじっと見ないでよ、恥ずかしいから」


ジュースを飲みながら、私は言った。


自分の部屋を見せるのは、どうしてだか少し恥ずかしい気持ちになる。


本当の自分をさらけ出すような気がするからだろうか。


いや、理由は何だって、恥ずかしいことに変わりはないけど。


「いいじゃない。別に散らかっている訳じゃないんだから」


しれっと言われたが、そういう問題じゃない。


そう思う一方で、偶然にも昨日、自分の部屋の片付けをしておいて良かったと思ったのは絶対秘密だ。


「可愛い部屋だね。女の子らしい」


侑也が笑顔でそう言うものだから、心臓がどくんどくんと煩くてしかたがない。


「そ、そうかな?」なんて目を逸らして逃げてしまわないと、心臓が止まってしまうんじゃないかと思った。


「そうだよ」と暖かい言葉を言われてしまったが、逆効果だ。


胸が痛い。


そう思うほど強く心拍しているから。


ちょっぴり甘くて、だけど、どうしたら良いか分からなくなってしまう沈黙が流れる。


そんな沈黙を破るように、亜美は咳払いすると「ところで」と話し始めた。


「あのひと、何なのかしらね」


「あのひと?」


侑也が聞き返す。


「貴方のとなりのひとのことよ」


亜美は不機嫌そうに言った。


「あぁ、えっと、吉崎聖(ひじり)君だっけ。彼、いつの間にかいなくなっていて驚いたよ」


そういえば、あいつ、今日の朝礼の後からいなくなっていなかったっけ?


朝礼だけ来るなんて、何がしたいんだかまるで分からないし、分かる気もしない。


「彼、よく学校に来ないの?」


「そうよ。テストしか受けに来ないの」


「でも、今日は来ていたよね?何か理由があるの?」


亜美は肩をすくめた。


「知らないわ、そんなこと。きっと誰も分からないわよ」

「なんてったって、サボリ魔だからね」


おまけに、性格も悪い。


それは口にしなかったが、思い出しただけで腹が立つ。



「毎日学校をサボってケンカしてるっていうウワサもあるわよ」


亜美はジュースを飲みながら、真実は分からないけれどね、と付け加えた。


「へぇ、そうなんだ」


侑也さんは穏やかな口調で言った。
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