突発性ヴァンパイア・ガール!
「ふざけるのもいい加減にしてよ!」


吉崎君は眉をひそめた。


「往生際が悪いぞ」


「うっさい!濡れ衣を着せられてそのまま黙って死ぬわけないじゃない!

そんなに人生捨ててないっつーの!」


大体、と私は一歩前に踏み出して人差し指を突き出した。


「それだけ私のことを吸血鬼って思ってんなら、何かもっとちゃんとした証拠を出しなさいよ!」


すると吉崎君はしばらく私を睨みつけると「いいだろう」と言った。なんて上から目線なやつなんだ。


吉崎君は持っていた十字架や拳銃を胸ポケットにしまうと、別のものを取り出した。


あんたの制服のポケットは四次元か!とツッコミたくなったが、口には出さず心の中で大絶叫した。


取り出したもの、それは小物入れのようなものだった。


中を開けると、片方には薄ピンクの付箋のようなものがあり、蓋の部分には赤から紫、そして青までの色の変化に伴い、各段階ごとに注釈として何か文字が書いてある。


それはどこの言葉か分からないけれど、日本語ではないのは分かった。


それになぜだか分からないけれど、細い、針のようなものまで収納してある。


いうなれば、これは。


「持ち運び可能な、リトマス試験紙?」


すると即座に「違う」という反応が返ってきた。


「吸血鬼発見紙。吸血鬼か否かを判断するための試験紙だ。酸性かアルカリ性かを確かめる試験紙じゃない。勘違いすんな、あほか」


すごい勢いで怒られたけど、知らないんだから間違ってもしょうがないじゃん。


というか『吸血鬼発見紙』?


なんだ、それ?


というか、なんでそんなものを吉崎君が持っているの?


問う前に右腕を引っ張られた。



「ちょっ、何す…」


何するの、と罵る前に、「指を出せ」と言われた。


「はあ?なんでそんなこと…」


「証拠見せろっつったのはあんただろ。

だからこの試験紙で証拠を見せるっつってんだよ」


いつ言ったよ、それ。


心の中で盛大にツッコミを入れた。


吉崎君は強引に私の右指を掴むと、吸血鬼発見紙なるものが入っているケースから針を取り出した。


それを戸惑うことなく私の右手の指先に刺した。


ぷくり、と血の赤が溢れる。


「った!」


そんな私のことなど知らぬと吉崎君は極めて冷静にその吸血鬼発見紙を一枚とると、針で刺した私の指先に当てた。
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