突発性ヴァンパイア・ガール!
何をするの、と問う前に吉崎君が言った。


「さっきの感覚、覚えているか?」


「さっきの、感覚?」


さっき、吉崎君の血まみれの左手を見て。


そしたら、視界が歪んで。


血を…。



「血の味を知りたいと、思ったような、気が、する…」


話すたびに、ぞくぞくと寒気がした。


そんな感覚、異常だ。


これが、この感覚が、私が吸血鬼であるという証拠?



「血の臭いを感じたら吸血鬼のような行動を取るが、それは一時だけだ。

さっきみたいに衝撃を受けたら人間に戻る。

その意味で、半分吸血鬼、半分人間だ」


吉崎君の言葉が急に現実味を帯びた。


「じゃあ、私はこれからどうすればいいの?」


自分の体をぎゅっと抱きしめて尋ねると、吉崎君は真顔で答えた。


「このまま何もしなければ、病気が進行して最終的にあんたは吸血鬼になる。

吸血鬼は不老だ。年を取らない。

絶対死なないわけではないが、吸血鬼ハンターや一般市民に殺されない限り、生き続けることができる。永遠にな。

それに体は人間より頑丈だ。

それでもいいというなら今まで通りに生きればいいだろう」


「嫌だ」


私はその提案を瞬時に否定した。


「嫌だ。吸血鬼になるなんて、嫌だ。人間がいい。今までみたいに、人間でいたい」


私は縋り付くように言った。


「どうすれば元に戻れるの」


「元に戻りたいのか?」


「当たり前でしょ」


すると吉崎君が言った。


「突発性吸血鬼症候群の病原菌は、今存在している吸血鬼だ。

患者は皆、吸血鬼と接触してその病気を移されている」


「吸血鬼と、接触?」


吸血鬼と遭遇したなんてそんな記憶、ないんだけど。


「吸血鬼に移されたその病原菌は、その吸血鬼の分身と言っても過言ではない。

病原菌を移した吸血鬼が存在している限り、病原菌もずっとあんたの体内に存在している。

そして進行を進めている」


「じゃあ、どうすれば…」


「病原菌を移した吸血鬼を滅すればいい」


簡単なことだろうと言わんばかりに、吉崎君ははっきり言った。
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