突発性ヴァンパイア・ガール！

「そ、そんなこと言われても、私に倒せるわけないじゃない！」


吸血鬼なんて、怪物だ。


それを、武術を体得してもいないごくごく普通の女子高生が倒せるわけがない。


「しかしそれ以外の策はない。

あんたも言ったが、この病気を知っているものはあまりに少ない。

医療機関で薬や点滴など、もらえるわけがないし、存在しない。

それどころかこの病気についても知らないわけだから、精神科医を進められるかもな」


どうする、と彼に言われているような気がした。


吉崎君の冷たい目は、どこか挑発してるような目でもあった。


「何もしなければ、私は吸血鬼になるんでしょ」


「あぁ。このまま何もしなければな」


私は拳を握った。


目を閉じて、自分に問いかける。



このまま何もせず、吸血鬼になるか。


それとも、抗ってみるか。



そんなの、初めから答えは決まっている。



目を開いて、吉崎君を見つめた。



「倒す。自分に病原菌を移した吸血鬼を」


「あんたに倒せると思うか？」


「分からない。だけど、諦めない」


私は、嫌だ。


このまま吸血鬼なんて怪物に成り果ててしまうことが。


怖いとも思った。


吸血鬼の感覚はもう二度と味わいたくない。


それに、私は今までみたいに、亜美と一緒に笑い合ったり、侑也と恋愛したり、普通の人生を謳歌したい。


2人と距離を置いたり、嫌われたりするのは、嫌だ。



「吉崎君にお願いがある。


一緒に、戦わせてほしい」


しかし吉崎君はきっぱりと言い放った。


「断る」


「どうして」


「一緒に戦うなんて、簡単に言うなよ。

吸血鬼を倒すつもりが、自分が殺されることだってざらにあんだぞ」


「それでもいい！」


私は叫んだ。


「それでもいいって、あんたな…」


「吸血鬼になるってことは、怪物に、化け物になるってことでしょ？

本能のままに、半永久的に動く生き物。

そうなったらもう、それは"私"じゃない。

人間である"私"じゃないんだよ。

そしたら人間である私は死んだも同然。

このまま何もしなければ、私は吸血鬼になって、"私"は死ぬ。

どのみち死んでしまうなら、わずかな可能性にかけたい」


私はもう一度見つめた。