突発性ヴァンパイア・ガール!


仕方なく学校をサボった私は、吉崎君と共に駅へ向かい電車に乗った。


それは今まで私が活用したことのない路線で。


降りると言われた駅名も、聞いたことのない駅名だ。


駅から出た瞬間、思わずあたりを見渡した。


見知らぬ土地に来た、という不安感や孤独感が体中を駆け巡った。


そんな私のことなど気にしない様子で、吉崎くんはスタスタと歩いていく。


足が長いのか、歩く速度が私よりずっと速い。


「ちょっ、待ってよ!」


私は慌てて走り、追いついた。


吉崎君の少し後ろをついていくように歩く。


昼間だというのにお日様は顔を出さない。

厚い雲に覆われた空は濃い灰色だ。


周りの景色を見ても、私が知らない場所なのでさっぱり分からない。


平日の、それもいつもは学校で授業を受けているはずの時間に、こうして見知らぬ土地で、大嫌いな吉崎君と一緒にいるなんて、不思議で仕方がない。

夢なのか現実なのか、どっちつかずの心地のままでひたすらに歩いた。


「ここだ」


吉崎君は唐突に立ち止まり、振り返った。


目の前に広がるのは、住宅街から外れた、人気のない場所にぽつんとあるような倉庫の前だった。

そっと見上げると、倉庫は鉛のようなくすんだ色をしていた。かなり前に建てられたものだろうか。

なんだか寂れて、人が頻繁に出入りするような倉庫ではないような感じがする。


「ここ、どこ…?」


「廃倉庫。今はもう誰も使っていないし、誰のものでもない倉庫だ」


「なんでここに来たの? ここに何かあるの?」


すると吉崎君は「うるさい」と言った。


「質問をいくつも同時に聞いてくるな」


面倒くさそうな顔をしている。


「ここに来た理由も、あとで分かる」


そういうと、吉崎君は倉庫の中に入ろうと扉に手をかけた。

ギイイ、と金属のこすれる音がして、その扉は割と簡単に開いた。


呆然と見ていると、おい、と呼ばれた。


「何をぼうっとしている。こっちだ」


曖昧な返事を返して、私も吉崎君の後に続いてその倉庫に入った。
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