突発性ヴァンパイア・ガール!
「いいか、今から絶対に大声を出すなよ。俺が何をしようとも、あんたはここから動くな。例え俺があんたを残して移動してもだ。絶対、一歩たりともここから動くな」
分かったか、と耳元でささやかれた。
頷いて吉崎君を見上げると、吉崎君はさっき置いた赤い布きれと豆粒の方を鋭い目で見ていた。
一瞬たりとも見逃さない。
そんな気迫が伝わってくるほどに、刃物のような鋭さを持った瞳だった。
「あれを見ろ」
その指の先にあったのは、6歳くらいの小さな子どもだった。
置かれた赤い布きれを見つけたようで、それに引き寄せられるようにしておぼつかない足取りで歩いていた。
「こっ、子ども? どうしてここに、あんなに小さい子どもが…」
子どもは吸い寄せられるように赤い布きれを持ち、臭いを嗅いでいる。
吉崎君は何も答えずにじっと見ていた。
そして目だけは子供から絶対離さないで、制服の内ポケットから何かを取り出した。
鉛色の拳銃。
昨日の放課後、私に突きつけたものだった。
あろうことかそれを子どもに向けたのだ。
「ちょっ、何してるの?!」
私はなるべく小さな声で咎めた。
「言ったはずだ。俺が何をしても動くなと」
鋭い目を向けられた。
「でも、吉崎君はあの子どもを撃つ気なんでしょ?そんなの許さないっつーの!」
「お前に許されようが許されまいが関係ねぇ。俺はやる決めたことをやる。あんたの意見はどうでもいい」
きっぱりと言い切られた。
「吉崎君が決めているとか決めていないとか、そんなの私にも関係ないから。だから私は自分がダメだと思ったことは、絶対、絶対に譲らない!」
吉崎君は眉間にしわを寄せた。
「本当に頑固だな、あんた」
そしてハッとしたように子どもに目を移した。
私もつられるように見た。
子どもは私の血が付着した赤い布きれの臭いを嗅ぎ続けていた。
その表情はなんだかうっとりしている。
「アァ、甘イ。イイ匂イ」
子どもはそう言った。
しかし、あれに臭いなどしていただろうか。
特に何の臭いもしていなかったと思う。
少なくとも、あの子があんなにもうっとりとした表情を浮かべるほどいい匂いはしていなかった。
分かったか、と耳元でささやかれた。
頷いて吉崎君を見上げると、吉崎君はさっき置いた赤い布きれと豆粒の方を鋭い目で見ていた。
一瞬たりとも見逃さない。
そんな気迫が伝わってくるほどに、刃物のような鋭さを持った瞳だった。
「あれを見ろ」
その指の先にあったのは、6歳くらいの小さな子どもだった。
置かれた赤い布きれを見つけたようで、それに引き寄せられるようにしておぼつかない足取りで歩いていた。
「こっ、子ども? どうしてここに、あんなに小さい子どもが…」
子どもは吸い寄せられるように赤い布きれを持ち、臭いを嗅いでいる。
吉崎君は何も答えずにじっと見ていた。
そして目だけは子供から絶対離さないで、制服の内ポケットから何かを取り出した。
鉛色の拳銃。
昨日の放課後、私に突きつけたものだった。
あろうことかそれを子どもに向けたのだ。
「ちょっ、何してるの?!」
私はなるべく小さな声で咎めた。
「言ったはずだ。俺が何をしても動くなと」
鋭い目を向けられた。
「でも、吉崎君はあの子どもを撃つ気なんでしょ?そんなの許さないっつーの!」
「お前に許されようが許されまいが関係ねぇ。俺はやる決めたことをやる。あんたの意見はどうでもいい」
きっぱりと言い切られた。
「吉崎君が決めているとか決めていないとか、そんなの私にも関係ないから。だから私は自分がダメだと思ったことは、絶対、絶対に譲らない!」
吉崎君は眉間にしわを寄せた。
「本当に頑固だな、あんた」
そしてハッとしたように子どもに目を移した。
私もつられるように見た。
子どもは私の血が付着した赤い布きれの臭いを嗅ぎ続けていた。
その表情はなんだかうっとりしている。
「アァ、甘イ。イイ匂イ」
子どもはそう言った。
しかし、あれに臭いなどしていただろうか。
特に何の臭いもしていなかったと思う。
少なくとも、あの子があんなにもうっとりとした表情を浮かべるほどいい匂いはしていなかった。