突発性ヴァンパイア・ガール!
そしてその子は次の瞬間、驚くべき行動に移った。


その手に持っていた布きれを。

私の血が付着した、あの赤い布きれを。


その口に運んだのだ。


思わず叫びそうになった口元を慌てて手でふさいだ。


「アァ…アァ…!甘イ…甘イ!

アァ、コレハ…ファイ ノ 血…!!」


その子は恍惚の表情を浮かべ、息を荒くしている。


私はその子の表情も気になってはいたが、それよりも先ほどその子が言った単語の方が引っかかっていた。


ファイの、血?


その布きれに付着している血は私の血だ。


その子はその布きれの臭いを嗅いだり、なめたり、異常ともとれる行動をしている。


恐怖を感じるほどだった。


思わず吉崎君に尋ねる。


「ね、ねぇ、あの子…」


「あれは吸血鬼だ」


吸血鬼!?


叫びそうになる気持ちを必死に抑えて、もう一度その子を見た。


確かに行動こそ異常ではあるが、それを除けば普通の子どもにしか見えない。


これが、吸血鬼。


初めて見る吸血鬼を目に焼き付けるように見ていた。


吉崎君はその子に銃口を向けた。


「よ、吉崎君、やめようよ」


声は、震えていた。


「なんで?」


見下ろした吉崎君の目は鋭かった。


「俺の仕事は吸血鬼ハンター。吸血鬼を狩ることが仕事だ。俺の仕事の邪魔をするな」


「でも、子どもを殺すなんて…」


罪悪感で胸が締め付けられそうだった。


「じゃあ、いいのか?もしあの吸血鬼に手をかけなかったとして、あんたの友達があの吸血鬼に血を吸われるようなことがあっていいのか?あんたはそれを許せるのか?」


「私は…」


例えば、亜美が吸血鬼に血を吸われるとしたら。


それは、嫌だ。


絶対、嫌だ。


でも、だからって…。


「俺は許せない。絶対に、許さない」


断言したその瞳には憎しみが込められていて。


何も言えなかった。


「ハァ…イイ匂イ」


その子はフラフラと立ち上がった。


そして彷徨うようにどこかへ行こうとしていた。


「チッ」


吉崎君は眉間にしわを寄せて、制服の内ポケットから何かが入っているらしき袋を取り出した。


その制服のポケットはやはり四次元に繋がっているのではないかと思わざるを得ない。

どれだけの収容量があるのだろうか。謎だ。


吉崎君は取り出したその袋からさらに何かを取り出して、それを子どもに向けて投げつけるように撒いた。

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