突発性ヴァンパイア・ガール!
「そいつを離さねぇなら

消滅させるぞ」


ググ、と引き金にかけられた人差し指に力がこもる。


「デキルモノナラ ヤッテミロ!」


吸血鬼も好戦的なようで、強気に返している。


私はというと、必死に考えを巡らせていた。


このまま私が何もせず、そして吉崎君も何もしなかったら、私はこの吸血鬼のエサとなってしまう。


そして私が何もせず、吉崎君がその拳銃を撃てば、吸血鬼は死ぬかもしれないが、私も同時に死んでしまう。


どのみち、私が何か行動を起こさなければ、私は自分の身を守ることができない。


しかしこの吸血鬼、抵抗しようにも異常なほどに腕力が強く、びくともしない。


正にバケモノ、怪物だ。


いや、感心している場合じゃない。

何か、何かないの?

この場を切り抜ける、何かが。


必死に思考を巡らせる。


きょろきょろとあたりを見渡す。


するとあるものが目に留まった。


「こ、れだ…」


塞がりつつある呼吸の中、呟いた。


「ちょっと、あんた」


私は吸血鬼に話しかけた。


「サッサト血ヲ寄越セ」


目が血走っている。


全く、この吸血鬼は本当に、血のことしか頭にないのか。


「あれを見なさいよ…あの、床に落ちているものを!」


首を絞めようと首に回している吸血鬼の腕を左手で止めながら、私は右手でそれを指差した。


吸血鬼はかったるそうな様子だったが、私が指差したものを視覚に捉えると様子は一変し、目を大きく見開いた。


「アレ、ハ…!」


吸血鬼は次の瞬間、私を離すとそれの前に移動した。


そして床にしゃがみ込んだ。


私も腰が抜けて床に崩れるようにしゃがみ込んでしまった。


呼吸は確保できたものの、まだ荒い息が続く。


吉崎くんが私の元に駆け寄った。


「あんた、よく思いついたな」
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