突発性ヴァンパイア・ガール!
私は荒れた息を整えながら答えた。


「吉崎君が、言ったでしょ。

『吸血鬼は粒を見つけると数を数えずにはいられない』って」


それをとっさに思い出した私は、床に散らばっている豆を指さしたんだ。

半信半疑だったけれど、本当に吸血鬼は粒を見つけると数を数えずにはいられないようだ。

吸血鬼は今もこちらに背を向けて大豆を数えている。


吉崎君の方に再び視線を移した私は目を見開いた。


目に映ったものが、信じられなかった。


だって、あの吉崎君が。


あの無口で、無表情で、愛想の欠片もない、吉崎君が。



少し目を細めて、口角を僅かにあげて。



「やるじゃん」



微かに、でも、確実に。


笑っていた。



その顔は、綺麗で、少し暖かくて。


突然のことに驚きを隠せず、心臓はドクンドクンと心拍する。



「後は任せろ」



吉崎君はそういうと、私の前に立ち、吸血鬼に銃口を向けながら言った。



「覚悟はできているか、吸血鬼」



吸血鬼ははっとしたように吉崎君を見た。


両手には、先ほど拾ったのであろう大豆がいくつも乗っかっていた。


「ハンター…!」


その目は怒りで満ちていた。


しかし大豆のほうが余程気になるのか、大豆と吉崎君を交互に見ている。



「俺はハンター。吸血鬼を狩ることが仕事だ。

だから俺はあんたを消滅させる」



吉崎君は無表情のまま引き金を引いた。


パン、と乾いた音が辺りに響く。


それと同時に、吸血鬼の断末魔のような叫びも響いた。


恐ろしくて、私は思わず目を逸らした。



やがて音が消え、その残響さえも消えたころ、ようやく視線を戻した。


そこには先ほどまでいた吸血鬼の姿はなかった。


文字通り、跡形もなく消えていた。


残っていたのは、発砲された銀色の弾丸だけだった。


吸血鬼を貫いた、銀の弾丸。


吉崎君はそっとその銀弾を拾い上げた。


そしてしばらく握りしめると、ズボンのポケットにしまった。


やがてこちらの視線に気づいたのか、私の方を見た。


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