突発性ヴァンパイア・ガール!
そして跪いて尋ねた。


怪我はないか、と。


私が頷くと、少し安心したような顔をした。


なんでそんな顔をするんだろう。


というか、吉崎君が安心したようにホッとした顔をするなんて、明日雪が降るんじゃ…いや、むしろ嵐になるんじゃ!


いや、もう本当に、ありえない。


ありえない!


「んな顔でこっち見んな」


吉崎君は私の隣に腰を落とすと、ムッとした顔で言った。


「勘違いするな。一般人を怪我させずに済んでよかったと思っただけだ」


腕を組むとそっぽを向いた。


「あんたみたいな一般人を巻き込んだとか、更には守り切れずに怪我させたとか、そういう事態になると、ハンターの中での俺の順位が下がる。

順位が下がれば、回ってくる仕事も減る。

回ってくる仕事が減ったら、給料が減る。

けど、あんたが怪我しなかったから俺の順位は下がらなかった。

それを喜んでんだよ」


なんて自己中心的な考え方。


「私がけがしなかったことをちょっとは喜んでくれたっていいじゃん!」


「なんで俺がそんなことで喜ばなくちゃなんねぇんだよ」


眉間にしわを寄せて、吉崎君はそんなことを言う。


「信じられない!吉崎君の中に良心というものは存在しないの!?悪魔なの!?鬼なの!?何なの!?」


「うっさい。何個も何個も質問ぶつけてくるんじゃねぇ。

俺ん中に良心くらいあるし、俺は悪魔じゃねぇし、鬼でもねぇし、人間だっつの。

考えなくても俺が人間なことくらい分かるだろ。馬鹿か」


「だから!たとえ話だよ!人間だって分かってるよ!

冗談が通じないの?ねぇ、通じないの!?」


なんだろう、吉崎君を相手しているとどっと疲れる。


亜美に引けをとらないくらいボケてくるよ、この人。

しかもこれがわざとボケてくるんじゃなくて素だなんて。

素でこんなにボケてくるなんて。


はぁ、とため息を吐かずにはいられなかった。

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