突発性ヴァンパイア・ガール!
吉崎君は眉間にしわを寄せたまま、倉庫の出口に向かって歩く。

数歩歩くと、急に足を止め振り返った。


「帰るぞ」


「えっ、ちょっ、待ってよ!」


急いで立ち上がろうとするけど、足に力が入らない。

立ち上がれなかった。


「どうした」


吉崎君に問われて、口ごもる。


「えっと、その…」


吉崎君はため息を吐いて、私の目の前にやってくるとしゃがみこんだ。


「立てねぇの?」


視線を逸らして頷くと、「バカ」と言われた。


「ひどい!また言った!またバカって言った!」


「うっさい。だってバカだろ。

立てねぇなら立てねぇと先に言え。こっちが聞かねぇと言わねぇなんてバカとしか言いようがねぇ。

大体、俺があんたのことに気づかなかったら、どうやってここから出るつもりだったんだよ?」


「それは…」


言葉が詰まった。

ケータイ電話を使って迎えに来てほしいと連絡したところで、この町の名前も場所も知らないから迎えを呼べない。助けも呼べない。


吉崎君はため息を吐くと、私に背中を向けてしゃがんだ。


顔をこちらに向けると「ほら」と言ってきた。


「え?」


「え?じゃねぇよ。立てねぇなら、負ぶってやるっつってんだよ」


「で、でも、わっ、わたっ、私、おっ重いし!」


「何どもってんだ。いいから早く」


吉崎君は急かすように言った。

私は仕方なく吉崎君の背中にしがみつく様に背負ってもらった。


「…重」


「うるさい!」


条件反射並みの速度で言い返した。


「だから重いよって言ったのに!」


しかも最近ちょっと太ったかなー?って少し心配してたのに!

明日からダイエットしよう、とかちょっと考えていたのに!


半泣き状態の私など知らないようで、吉崎君は「別にいいんじゃねぇの」と言った。


「軽すぎると逆にこっちが心配になる」


何でも適度ってもんがあるだろ、と吉崎君は言った。

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