突発性ヴァンパイア・ガール!
やっぱり、今回もそうだった。

亜美が言った"いいこと"は決していいことではなく、むしろ最悪だ。


大体、可笑しいんだって。

吉崎君と一緒に、喫茶店に来るなんて。


私と亜美、そして侑也はそれぞれ仲が良いし、普段から3人で話すことも多い。

だけど、3人とも吉崎君とあまり話をしたことがない。


そりゃ、私が3人の中でいちばん吉崎君と話しているとは思う。

吸血鬼関係のことで、話すことは確かにある。

けれど雑談なんてしたことがない。


というか、吉崎君はあまり人と話すことが好きではないらしい。


必要最低限のことしか話さないような、そんな人だから。

吉崎君の趣味がなんだとか、何が好きだとか、何に興味を持っているだとか、そういうことが一切分からない。

共通点も何も分からないから、何の話をしたら良いのかも分からない。


「あぁ、そうだ。この前の数学の時間覚えてる?」


亜美が突然言った。


「ええっと、あの数学の先生が、国語の若い先生と結婚したって話?」


私が聞き返すと、亜美は頷いた。


「あぁ、確か、授業中にその馴れ初めを話したんだよね」


侑也も話に入ってきた。


「あの二人、結婚したって聞く前からすごくお似合いだなあって思っていたのよね」


亜美は両肘を机に乗せ、指を組むとその上に顎をのせて、うっとりした表情で言った。


「確かに、幸せオーラでいっぱいだったよね。吉崎君も覚えてる?」


何の気なしに私が尋ねると、出された水を飲みながら「その授業、出てないから」と吉崎君は冷ややかに言った。


再び沈黙が訪れる。


…クラスメイトのはずなのに、吉崎君がサボリ魔で学校にいないことが多いから学校の話で盛り上がることもできない。


どんな話をしたらいいんだろうと顔を見合わせる私達のことなど知らぬといった様子で吉崎君はぼうっと外を眺めていた。


この人、自由すぎじゃないかと思うのですが。
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