突発性ヴァンパイア・ガール！

The 3rd satge

噂と見えなくなる心

私は悪い人間だろうか。


最近、私の胸の中で渦巻く鉛色の罪悪感のようなこの感情をどうにもできずにいた。



私には彼氏がいる。


優しくて、紳士的で、少し可愛いなあと思うところもあるけれど、やっぱりかっこよくて。

吸い込まれるような瞳は優しいけど、怖いくらいに魅力的で。


私には勿体ないくらいの、本当に素敵な彼氏。


私は好き。


彼氏である侑也が、好き。


確かに、好き、なのに。



どうしてだろう。



どうしてだか、自分でも分からないけれど。



アイツが。


アイツの言葉が。


頭の中でずっとずっと、反響していて。



『バーカ』



むかつくくらいに、忘れられなくて。



あぁ、やっぱり、私は悪い人間なのかもしれない。


私は、アイツを......。



はぁ、と大きく溜息を吐きながら、教室の扉を開けた。



「おはよう」



笑顔で、そう言ったつもりだったけど、どうしてだか大勢の人に囲まれた。

ぐるりと私を二重に取り囲んだ、クラスの女の子達。


「お、おはよう…？」


挨拶しても、誰もおはようと挨拶を返してくれない。


それどころか、みなさん、殺気立っているような…？


「ど、どうしたの？」


私が尋ねると、「それはこっちのセリフよ！」と梨花ちゃんに怒られた。


「うらら、吉崎君とはどういう関係なの？」


「は？」


私はあたりをぐるりと見渡した。


「え、待って、どういうこと？」


しかし誰もその理由を説明してくれない。


「うらら！」


亜美の声がして振り返ると同時に腕を引っ張られて、女の子達の輪の中から出た。


「ありがとう、亜美、助かったよ！」


はぁ、と息を整えながら尋ねる。


「ねえ、亜美。クラスのみなさんどうしたの？なんで朝からあんなに殺気立ってんの？」


亜美は「落ち着いて聞いてね」と呼吸を置くと、語りだした。



一体誰が予想しただろう。


「うららと吉崎君が付き合ってるって噂が流れているのよ」


こんな噂が流れているなんて。


「は！？」


耳を疑わずにはいられなかった。