突発性ヴァンパイア・ガール!
*
そのあと侑也と一旦別れて、私は一人廊下を歩いていた。
亜美は私を信じてくれた。
侑也も私を信じてくれた。
私の身の潔白を信じてくれる人は、確かにちゃんといる。
とは言うものの。
どうしたらいいだろう。
必死に頭を回転させながら、歩いていると、ごつん、と何かにぶつかった。
思わずしりもちをつく。
「った~!」
ぶつかったものを見ると、私は目を見開いた。
「うっそ、こんな時に…!」
ぶつかったもの、それは。
「オマエノ血 寄越セ」
吸血鬼。
けれど、この前の廃倉庫で見たそれとは明らかに違う。
あの時の子供よりずっと、小さい。
けれど口元からのぞかせている鋭い牙。
血の気の悪い青白い肌。
それらは全て吸血鬼を連想させるものだった。
「あんたにあげる血なんてないっつーの」
笑みを浮かべて挑戦的に言うと、その吸血鬼は怒った様子で私に言った。
「オマエノ血 寄越セ!」
吸血鬼は怒った様子でナイフを投げてきた。
間一髪でそれをよける。
ドス、と鈍い音がして、ナイフは廊下の壁に刺さった。
「ちょっ、危ないっつーの!怪我したらどうするのよ!」
「血ヲ寄越セ!」
血のこと以外、何も考えていないようだ。
どうしよう。
ポケットに手を入れて探っても、何か武器が出てくるわけじゃない。
ジリジリと追いつめられる。
「寄越セ」
吸血鬼はナイフをまた投げた。
何とかよけるけど、少し頬をかすった。
一滴の血が溢れ、頬を伝い、音もなく廊下に落ちる。
「血ダ!」
しかし血に敏感な吸血鬼はそれに素早く反応し、鼻をひくつかせると目を見開いた。
そして恍惚の笑みを浮かべた。
「コレ ハ ファイ ノ 血!」
吸血鬼は廊下に落ちた一滴の血をなめとると、「甘イ 甘イ」と笑った。
恐ろしい、と思った。
自分よりはずっと小さなこの生き物が、ひどく恐ろしいと思った。
「モット 寄越セ!
ファイ ノ 血 ヲ 寄越セ!」
「だから、さっきから言ってるでしょうが!あんたにあげる血は一滴もないっつーの!」
私は言いながら逃げる。
武器を何も持っていない私にはそれしかできない。
そのあと侑也と一旦別れて、私は一人廊下を歩いていた。
亜美は私を信じてくれた。
侑也も私を信じてくれた。
私の身の潔白を信じてくれる人は、確かにちゃんといる。
とは言うものの。
どうしたらいいだろう。
必死に頭を回転させながら、歩いていると、ごつん、と何かにぶつかった。
思わずしりもちをつく。
「った~!」
ぶつかったものを見ると、私は目を見開いた。
「うっそ、こんな時に…!」
ぶつかったもの、それは。
「オマエノ血 寄越セ」
吸血鬼。
けれど、この前の廃倉庫で見たそれとは明らかに違う。
あの時の子供よりずっと、小さい。
けれど口元からのぞかせている鋭い牙。
血の気の悪い青白い肌。
それらは全て吸血鬼を連想させるものだった。
「あんたにあげる血なんてないっつーの」
笑みを浮かべて挑戦的に言うと、その吸血鬼は怒った様子で私に言った。
「オマエノ血 寄越セ!」
吸血鬼は怒った様子でナイフを投げてきた。
間一髪でそれをよける。
ドス、と鈍い音がして、ナイフは廊下の壁に刺さった。
「ちょっ、危ないっつーの!怪我したらどうするのよ!」
「血ヲ寄越セ!」
血のこと以外、何も考えていないようだ。
どうしよう。
ポケットに手を入れて探っても、何か武器が出てくるわけじゃない。
ジリジリと追いつめられる。
「寄越セ」
吸血鬼はナイフをまた投げた。
何とかよけるけど、少し頬をかすった。
一滴の血が溢れ、頬を伝い、音もなく廊下に落ちる。
「血ダ!」
しかし血に敏感な吸血鬼はそれに素早く反応し、鼻をひくつかせると目を見開いた。
そして恍惚の笑みを浮かべた。
「コレ ハ ファイ ノ 血!」
吸血鬼は廊下に落ちた一滴の血をなめとると、「甘イ 甘イ」と笑った。
恐ろしい、と思った。
自分よりはずっと小さなこの生き物が、ひどく恐ろしいと思った。
「モット 寄越セ!
ファイ ノ 血 ヲ 寄越セ!」
「だから、さっきから言ってるでしょうが!あんたにあげる血は一滴もないっつーの!」
私は言いながら逃げる。
武器を何も持っていない私にはそれしかできない。