突発性ヴァンパイア・ガール!
しかし、行き着いた先は行き止まりだった。

普段は滅多に来ることがない、掃除道具やダンボールなどがしまわれている倉庫。


しまったと思い引き返そうとするも既に遅く。


「血 ヲ 寄越セ」



吸血鬼がそこまで迫っていた。


もうだめだ。


血を吸われる。


そう思った時だった。



「やっぱバカだな、あんた」



パン、と乾いた音が響いた。


「グワアァァア!」


吸血鬼は苦しみだした。


心臓の場所から赤い血がどろっと溢れ、崩れるように吸血鬼は倒れた。


そして廊下の角から現れたのは。


「吉崎君!」


彼、だった。


「逃げるはいいが逃げた先が行き止まりとか、バカでしかないだろ」


吉崎君は拳銃を肩にかけて、ため息を吐いた。


「そ、そんなこと言ったって!」


私が言い訳をしていると、吉崎君は私の前に立ち吸血鬼を冷たい目で見下していた。


私もつられて吸血鬼の方を見ると、吸血鬼は着ていた服も含めて白に近い灰色に変わり果てていた。


そしてサラサラと砂の城が崩れるように、この前見た廃倉庫の吸血鬼のように、灰になって消えていった。


「ったく、学校にまで来るようになったのかよ。面倒くさ」


吉崎君は眉間にしわを寄せて、吸血鬼の灰を見つめていた。


しばらくしてこちらに振り返ると、跪いて「無事か?」と聞いた。


「あ、うん。大丈夫」


私が答えると少し安心したように、そうか、と言った。


「ありがとう」


「別に」


吉崎君は立ち上がりながらため息交じりに言った。


微妙な沈黙が流れる。


ただでさえ人通りのない、行き止まりのこの場所で、2人きり。


2人ともしゃべらないだけで、周りから音が消える。


心臓は大きな音で鼓動を続ける。


あまりにも大きくて、この心臓の音が聞こえるんじゃないかと心配になるほどだった。

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